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<対談>安部龍太郎×出口治明「日本史を知るには、世界史を学べ」

<対談>安部龍太郎×出口治明「日本史を知るには、世界史を学べ」

「オール讀物」編集部

安部龍太郎『海の十字架』刊行記念対談

出典 : #オール讀物
ジャンル : #歴史・時代小説

日本に「シルバーラッシュ」が到来

『0から学ぶ「日本史」講義(中世篇)』(出口 治明)

出口 本書は、交易の中でも特に「銀」と「鉄砲」、それと「キリスト教」がキーワードになっていますね。今日は、これらについて、安部さんに一つずつお訊ねしたいと思っています。まず、安部さんが「銀」に着目されたきっかけは何だったのですか。

安部 長い間、上杉謙信の財源は何だろうと考えていたんです。当時はまだ越後は米どころではなく、考えられるのは、衣服の原料になる青苧(あおそ)の栽培と、直江津港の津料や関銭です。でも、それだけではあれほど鮮やかなことはできない。

出口 上杉謙信は関東に12回も出兵していますが、そのうち8回は冬なんです。つまり、雪深い越後から、雪の少ない関東へ行ってそこでご飯を食べ、春になったら戻ってきていたんだと思います。

安部 言ってみたら、農民兵の出稼ぎですね。でも、そんなことでは大した財源にはならない。それである時、佐渡島のことを調べていたら、鶴子銀山がちょうど謙信の頃に開発されている。それで、鶴子銀山に取材に行ってみると、採掘の人夫たちを石見銀山から連れて来ていることがわかったんです。石見と佐渡はこんなに近かったのかと思いました。

出口 技術が伝わり、広がっていくわけですね。

安部龍太郎氏

安部 石見銀山を開発したのは博多の貿易商・神屋寿禎です。ですから、上杉謙信は、石見銀山を通じて神屋寿禎と繋がり、火縄銃も手に入れたんだと、佐渡に行ってよくわかった。その発見が、「景虎、佐渡へ」という一篇に繋がりました。

 この神屋寿禎は、朝鮮から灰吹法という新しい精錬技術を導入します。灰吹法は精錬の効率がよく銀の純度が高くなりますが、大量の鉛が必要となる。ところが、日本は鉛の生産量が少なくて、最近の研究によると、ほぼ4分の3を輸入に頼っていたようです。そうすると、鉛を輸入して銀を売るという交易ができるわけですが、その運送を担ったのが、「乱世の海峡」で描いた宗像氏貞の、宗像水軍です。実は、宗像大社の神宝館には鉄のインゴットが納められているんです。かつて、沖ノ島に鉄が奉納されていたんですね。鉄は古墳時代くらいまでは朝鮮半島から輸入していたんですが、おそらく、その輸入を担っていたのが宗像水軍だったのだろうと思います。

出口 つまりそれくらい、宗像水軍と東アジア交易というのは密接に結びついていたわけですね。

安部 ええ。そして、石見で産出した銀は博多に運ばれ、そこから明や東南アジアへ流れていき、代わりに輸入品が入ってくる。この“シルバーラッシュ”が日本の経済構造を変えたのだと思います。

出口 あの頃の日本は、全世界の銀の3分の1を産出していたという説もあります。これはちょっとオーバーだとは思いますが、それほど銀があったら、世界中の人が群がってくるのは当然です。

安部 その交易を担っていたのが、王直など、明国の海商ですよね。王直のことを「後期倭寇」などと言いますが、あれはまさに海商です。

単行本
海の十字架
安部龍太郎

定価:1,540円(税込)発売日:2020年02月17日

単行本
0から学ぶ「日本史」講義(中世篇)
出口治明

定価:1,540円(税込)発売日:2019年06月13日

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