当初は、避妊去勢済みの証に耳を切られた地域猫、いわゆる「さくら猫」だと思っていました。「地域猫ならどこかで面倒を見てくれる人がいるのだろうし、下手に手を出さないほうがいいだろう」と見守っていたのですが、この猫、まあ家の近くから動かない! やせ細っていて他所でご飯をもらっている様子が全然ないし、他の野良猫と喧嘩して負けてばかりいる姿をちらほら見るようになり、もしやあの耳の欠けはただの喧嘩キズではないか疑惑が日ごとに募っていきました。
しかもニャアは人間を恐れず、じっと窓の外から家の中を覗き込むのです。そのうちに姿が見えないと「あの子、今日はどこにいるのだろう」「喧嘩で負けていないだろうか」と、両親がそわそわするようになりました。
当時、15年飼っていた愛犬が死んだばかりで、両親は明らかにペットロス状態にありました。帰省する度にテレビの録画リストが犬猫動物特集ばかりなのが気になっていたので「これはもしや」と思ったのですが、案の定、東京に戻ってから次に電話した時には「あの子はうちで飼う」という話になっていて笑ってしまいました。もちろん、私は猫を飼うことに大賛成でした!
それから紆余曲折あり、現在、ふてぶてしい顔をしたぶちゃいくな茶白トラは可愛い顔で実家の居間で眠っているわけなのですが――そのあれこれについては、またいずれの機会に語らせて頂きたいと思います。
阿部智里(あべ・ちさと) 1991年群馬県生まれ。2012年早稲田大学文化構想学部在学中、史上最年少の20歳で松本清張賞を受賞。17年早稲田大学大学院文学研究科修士課程修了。デビュー作から続く著書「八咫烏シリーズ」は累計130万部を越える大ベストセラーに。松崎夏未氏が『烏に単は似合わない』をWEB&アプリ「コミックDAYS」(講談社)ほかで漫画連載。19年『発現』(NHK出版)刊行。現在は「八咫烏シリーズ」第2部『楽園の烏』を執筆中。
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