デビュー以来、骨太な歴史小説を上梓し、最近では奈良時代の天然痘のパンデミックを扱った『火定』が話題となっている澤田瞳子さん。新刊『駆け入りの寺』は江戸時代中期の京都・洛北を舞台に、元皇女の尼と周辺の人を描いた本格時代短篇集だ。その奥深い魅力に触れた、全国書店員の皆さんからの感想をご紹介!
ブックランドフレンズ 西村友紀さん
澤田瞳子先生の『駆け入りの寺』を一気に読了しました。静謐な比丘尼御所の雰囲気と御所ことばに触れて、時間が私の周りだけゆっくり過ぎていくような体験でした。
『逃げる』ことを良しとしないこの世の中で、あえて『逃げる』ことは次の一歩を踏み出す大切なことなのだ、と教えてもらえた気がします。人は人を想うから、傷つけ傷つけられるんだ、だからこそ、許すことは優しさなのだ、という澤田瞳子先生の想いも受け取れたつもりです。
こんな殺伐とした今だからこそ、皆に読んで欲しい柔らかな作品。四季折々の比丘尼御所での生活を疑似体験できる素敵な作品。毎日つらいニュースばかりで気持ちがめげそうでしたが、『駆け入りの寺』に救われました。実際に駆け入りたくなりました。
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