柳正堂書店甲府昭和イトーヨーカドー店 山本机久美さん
瞳子先生の作品を読ませていただくときは特にメモ必須です。知らない語彙が登場する率が高くて(己の語彙力の低さよ……)、その度に書き出して意味を調べて納得してから読み進めるもので、いつも時間をたっぷりかけて読むんです(笑)、今作はなんといっても御所ことばですよね。可愛らしくてなんとも微笑ましい。
まずメモしたのが好物=おすきさん、でした。
むつこうて=泣いて
おにつこうて=怒って
他にも意味がわかるとなるほどなーと感じるものばかり。気に入らないことは、おさわりさん。これとても柔らかい感じがしていい(笑)!
そして、実は私……逃げたことあるんです。初めて入社した会社で、それはまあひどい新人いじめに遭いまして……学校から推薦枠1人を勝ち取って入社した会社なのに、私が辞めたら後輩たちにも影響が……と考え始めると苦しくて苦しくて。友達に相談したくともみんな就職したばかりでそれどころではないだろうし、唯一話していた母親にも「毎日暗い顔でそんな話ばかりいい加減にして。父親には話さないで」と突っぱねられ、行き場を失って辛い日々でした。
しかし私が上司に辞めたいと直談判した日、上司から親御さんに夜電話すると言われ、初めて父親に「会社を辞めたい」と伝えました。勤め始めてまだ1ヶ月なのにみっともないと世間体ばかり気にする母親はさておき、父親は私のたった一言だけで「大変だったな。電話で俺がちゃんと話をつけてやるから、もう明日から行かなくてよし」と。上司との電話で「うちの娘が身体を壊したら会社で面倒を見てくれますか? できないでしょう? 娘はもう辞めさせます。行かせません」とキッパリ。
父親の性格にそっくりな娘ですから喧嘩することもありましたが(笑)、私がこれまでどれだけ頑張って我慢してきたか、わかってくれたのは他ならぬ父親でした。今でも感謝してます。
私を生かしてくれてありがとうって。そんな経緯がありましたので、「逃げたこと」に悩み苦しむ、登場人物の静馬に感情移入しまくりでした。
逃げてよかったんだよ?
だって今こうして生きてるんだから。
逃げるという選択をするまでにどれほど辛い思いをしてきたことか。
生きてさえいれば、やり直せる。
私が父親に駆け込んだようにそれぞれどこかに駆け込める場所があるといい。この作品に登場する人々も、読者も、みんな何かを抱えて生きている。どうにもならなくなったら、逃げるのもアリなんだよと、みんなが気づいてくれたらうれしいなぁ。
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『赤毛のアン論』松本侑子・著
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