- 2020.05.12
- 書評
オタク最強! の生きざまを描き、「女子の呪いをとく力」を持った超ハッピーなエッセイコミック
文:アルテイシア (作家)
『まるごと 腐女子のつづ井さん』(つづ井)
出典 : #文春文庫
ジャンル :
#コミック・コミックエッセイ
つづ井さんと同様、彼氏がいなくても毎日楽しくハッピーなのに、「こんな自分には欠陥があるのでは?」と自問する女子は多い。世間にはいまだに「女は結婚出産するべき」「それが女の幸せ」という呪いが存在するからだ。
サッカーを観るのが好きな女子に「なんで自分はサッカーしないの?」とは聞かないだろう。でも男同士の恋愛(BL)を見るのが好きだと話すと「なんで自分は恋愛しないの?」と聞かれたり、推しに夢中だと話すと「現実に彼氏作ったら?」と言われたりする。
もう令和やぞ? という話だが、アップデートできない人々が「若い女は恋愛するのが自然(そうじゃないのは不自然)」と押しつけてくる。人には様々な事情や生き方やセクシャリティがあるのに「人数が多い方が正しい」「みんなと同じになれ」と同調圧力をかけてくるのだ。
そんな呪いに苦しむ女子たちが「つづ井さんの漫画を読むと救われる」と声をそろえる。つづ井さんや友人たちの楽しそうな姿に勇気づけられ、自身を肯定できるのだと。
つづ井さんは「私たち楽しそうでしょ‼」と声高にアピールしないし、「みんな腐女子やオタクになればいい‼」と押しつけたりもしない。ただ自分たちが好き勝手に楽しんでいて、それを読んだ人が笑って元気になる。そこがつづ井さんの尊く稀有な才能であり、この漫画が愛される理由だと思う。
また、つづ井さんはオタク以外の人間も否定しないし、オタク同士で好きなジャンルや推し方が違っても否定しない。「強火のオタクほど偉い」的なマウンティングやヒエラルキーも存在しない。
「みんな違って、みんないい」と尊重して認め合う世界、多様性を肯定する世界を描いているから、オタクや腐女子以外にも愛されるのだろう。
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