理屈っぽい話はこのくらいにして、本書では男と女の性愛のちがいについて、誰でも楽しんで読める研究を選んで紹介した。「なるほど」とうなずくものもあれば、「そんなわけない」と怒り出す話もあるだろうが、そんなときは自分で確かめられるよう原論文を参照可能にしている。
ここまで読んで気づいた方もいるだろうが、タイトルは『女と男』でも、文章のうえでは「男と女」を使っている。内心、忸怩たるものはあるが、「女男差」「女男平等」はやはりおかしいので、社会構築主義者が批判する「男性中心主義」に屈することになった。
生物学的にいうならば、オスとメスによる両性生殖が進化したのは、グループ間で遺伝子を効率的に交換できるからだ。それぞれの個体に遺伝的多様性がないと、寄生虫、細菌、ウイルスに感染したときに種ごと絶滅してしまう。
そのように考えれば、オスの役割は(子孫を産む)メスに遺伝的な多様性を付加することしかない。神経科学者のサイモン・ルベイはここから、「オスはメスにとって寄生虫とさして変わりはない」と述べた。
かくいう私も「寄生虫」の一匹なので、不手際をご容赦願いたい。
(「はじめに」より)
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