本書は、プロ棋士(九段)の先崎氏が1年にわたるうつ病との闘病を記した当事者手記だ。先崎氏のアドバイザーとして登場する実兄の精神科医が本書では重要な役割を果たしている。本書の意義は兄の語る以下の言葉に集約されている。〈「学が経験したことをそのまま書けばいい、本物のうつ病のことをきちんと書いた本というのは実は少ないんだ。うつっぽい、とか軽いうつの人が書いたものは多い。でも本物のうつ病というのは、まったく違うものなんだ。ごっちゃになっている。うつ病は辛い病気だが死ななければ必ず治るんだ」〉。
うつ病の人にとって、特に深刻なのが、死への誘惑だ。先崎氏はこう記す。〈駅へ行く。そこで私は電車に乗るのが無性に怖くなった。思えば前回の対局以来、電車に乗っていなかった。/正確にいうと、電車に乗るのが怖いのではなく、ホームに立つのが怖かったのだ。なにせ毎日何十回も電車に飛び込むイメージが頭の中を駆け巡っているのである。いや、飛び込むというより、自然に吸い込まれるというのが正しいかもしれない。死に向かって一歩を踏み出すハードルが極端に低いのだ〉。
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