書評

「女は、怖い」のではない。「怖いから、女」なのだ

文: 酒井 順子 (エッセイスト)

『ウェイティング・バー』(林 真理子)

『ウェイティング・バー』(林 真理子)

「女は怖い」ということに気がつかない男性に対して、私は昔、非常にイラつきました。まだ自分の中にある「穴」に気づいてない頃は、うまくネコをかぶってモテまくる女性を見ると“どうしてこの女の性根の悪さに男は気がつかないのだッ!”と、ムカムカしたもの。

 しかし最近は、何だかわかってきた気がするのです。男性というのは元来、女性が持つ恐ろしい部分には気がつかないようにできている生きものなのだ、ということが。男性が最初から女の恐ろしさを知っていたら、彼等はとても恋愛などできないだろう。もちろん結婚もしないし、子孫を作ろうともしない。そうしたら人間は滅亡してしまう……。そう考えた神様が、女性の恐ろしい部分にのみ通用する目かくしを、男性に与えたのではないか。

 そのお陰で私達は、安心して、堂々と悪人になることができるのです。甘い先生が監督するテストの時にカンニングをしまくる生徒達のように。

「女は、怖い」。と言うよりも、「怖いから、女」。怖い部分を全く持っていない聖女は、「女」ではない。「女」という団体は、フリーメイソンやKKKも足元にも及ばない、世界最大の秘密組織と言ってもいいかもしれません。

ウェイティング・バー林真理子

定価:本体630円+税発売日:2020年05月08日


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