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歴史小説はこんなに面白い! 後編

歴史小説はこんなに面白い! 後編

聞き手:「オール讀物」編集部

天野純希×今村翔吾×川越宗一×木下昌輝×澤田瞳子×武川佑×谷津矢車

出典 : #オール讀物
ジャンル : #歴史・時代小説

実際に現地に行かなければ分からない!

 ――新型コロナウイルスという大きな出来事がありましたが、皆さんの執筆スタイルになにか変化はありましたか?

 今村 あんまり変わらないんですけど、史料が手に入りにくい時期はありました。図書館が閉まったりして。

 澤田 そうそう。困ったのは史料ですね。

 木下 取材に行けないのは困りました。題材によりますけど、現地にしかないような史料もありますし、実際にそこに立たないと感じられない空気も大切だと思ってまして。

 谷津 ありますね。行ってみたら、意外と寒かったとか。

 今村 距離感とかも実際に行ってみないと分からへんよね。

 谷津 そういえば、以前、福井に取材に行ったところ、その一週間後に武川さんも取材に訪れたとか。

 武川 関東民なので、雪が降ってるときの福井の寒さを確かめたくて行ったんですけど、今年は全然雪が降ってなくて、困りました。

 谷津 越前の雪って、どうも関東の人間がイメージする雪と違うみたいですね。めちゃくちゃ重いって聞いたことがあります。

 今村 作家になる前、週に一回福井に仕事で行ってたけど、一メートルくらいすぐに積もるんですよ。ちなみに、武川さんが取材に行った、一週間後、僕も福井に取材に行ったんです。

 天野 もしかして、書こうとしている題材がかぶった?

 武川 それが微妙にかぶってなくて、安心しました。

 澤田 ネタがかぶるのは怖いですよね。

 天野 そうなんですよ。長崎に取材に行ったら、取材先に川越さんのサインがあったときは、「しまった」と思いましたよ(笑)。

 今村 長崎のどこに行ったんですか?

 天野 後に台湾に渡り、鄭氏政権の祖となった、鄭成功の生家です。母親が日本人なんですよね。

 今村 あ、そのあたりを書くんですね。これからの歴史小説って、世界の中の日本を描くか、日本の中の狭いところにぐっと寄るかの二択が主流になるんじゃないかと思っていて、僕の場合は引いた作品を多く執筆したいと思ってる。世界の中の日本を描く物語をいっぱい作っていきたいですね。

 天野 うん。僕も引いたところから日本を見る方向に行ってるかな。

 今村 川越さんも引いて見る派でしょ? いままでも日本の外を描くことが多いし。

 川越 漂流してる人をよく書いている気がします。「ここじゃないな」ってずっと思っている人に興味があるんだと思う。

川越宗一 かわごえそういち
1978年鹿児島県生まれ、大阪府出身。2018年『天地に燦たり』で松本清張賞を受賞してデビュー。20年『熱源』で直木賞を受賞。

 武川 私は逆に寄る派なんですよ。ミクロのミクロに行きたい。地方の領主とか、戦で負けちゃった人が好きなんでしょうね。以前、新発田重家を短篇で書いたことがありますが、もうちょっとで上杉家を潰せたかもしれないくらいの感じがすごく良くて。

電子書籍
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オール讀物編集部

発売日:2020年12月22日

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