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歴史小説はこんなに面白い! 後編

歴史小説はこんなに面白い! 後編

聞き手:「オール讀物」編集部

天野純希×今村翔吾×川越宗一×木下昌輝×澤田瞳子×武川佑×谷津矢車

出典 : #オール讀物
ジャンル : #歴史・時代小説

本能寺の変以外も信長は謎に満ちている

 澤田 女子高に通っていたとき、宝塚歌劇団を好きな子が周りにいっぱいいました。すると、その子たちは『ベルサイユのばら』が好きだから、フランス史にすごく詳しくなる。当時は藤本ひとみさんがフランスものを書いていたので、みんな読んでいたんですね。それらを見てきたので、好きなものから小説にいくケースというのは間違いなくあるんですが、『ベルサイユのばら』のような、女性にひっかかるものがなかなか見つからないのが現状だと思います。

 今村 韓国の歴史小説を書いたら、意外と流行るんかな。韓国や中国のドラマが女性の間でまたブームでしょ。

今村翔吾 いまむらしょうご
1984年京都府生まれ。2017年『火喰鳥 羽州ぼろ鳶組』でデビュー。20年『八本目の槍』で吉川英治文学新人賞、『じんかん』で山田風太郎賞受賞。

 澤田 たしかに後宮ものは人気ですね。

 谷津 後宮ものはいま小説界でもブームですよ。その点、日本の歴史小説は女性を主人公にした作品が少ないかもしれません。

 澤田 もし日本の歴史で女性を描くなら、織田信長の妹・お市の方を書きたいなって思ってるんです。あんな兄がいたら大変でしょうし(笑)、どうして北ノ庄城で死んだのか、個人的に納得がいかない。信長がらみだと、本能寺の変以上に私の中ではミステリーで。

 木下 信長の話になると、どうしても本能寺の変が大きな謎ととらえられがちなんですけど、荒木村重や浅井長政がどうして裏切ったかというのだって、重要な謎なんですよね。明智光秀だけを大きく取り上げることにちょっと違和感があります。

 澤田 信長の面白いところって、あの時代を書こうと思ったら、天皇家、諸大名、文化や築城など、何を書こうと思っても信長を通らざるをえないところで。

 天野 でも信長を書くときって、めちゃくちゃプレッシャーがかかる……。

 木下 天野さんがここにいる誰よりも信長を書いてるじゃないですか(笑)。

 谷津 イメージが付きすぎちゃっているから、そのイメージを守りつつ、独自性を出すのが難しい気がします。研究が進んでだいぶ人物像が明らかになってきたところもありますし。

 武川 最近の研究だと、歴史学者の金子拓、柴裕之両先生らが、従来からイメージされるエキセントリックな信長ではなく、幕臣として室町幕府を再興しようとしていた保守的なところがあるんじゃないかという説を唱えていて、そういった学説が今後、歴史小説に反映されていくのかなと予想しています。大河ドラマの『麒麟がくる』を観ていても、真面目でナイーブな信長の部分が多く出ていて、フィクションの中の信長像というのも変わっていくのかなと。

 木下 僕は先日、『信長 空白の百三十日』(文春新書)という新書を出したので、信長については相当分析しました。精神科医じゃないので、確実なことは言えませんが、信長は自己愛性パーソナリティ障害だったと考えています。要は、長く付き合えば付き合うほど信長から人が離れていくんですね。桶狭間の戦いのときに信長について行った配下も、その後ほとんど皆愛想を尽かしている。信長の謎って色々あるけど、最終的には彼の性格に行きつくんじゃないかな。

木下昌輝 きのしたまさき
1974年大阪府生まれ。2012年「宇喜多の捨て嫁」でオール讀物新人賞を受賞しデビュー。20年『まむし三代記』で中山義秀文学賞受賞。

 天野 僕も『信長 暁の魔王』(集英社文庫)を書いた際、精神医学の本を参考にしました。母親との仲が悪かったというので、育児放棄とかそういう本を山ほど読みましたね。

 今村 結局、色々な研究が進んでも、信長という人間はどこかミステリアスなところを持っていて、それが魅力であり、同時に一つの答えに当てはめるのが難しいのかもしれないですね。

電子書籍
本屋が選ぶ時代小説大賞2011〜2020
オール讀物編集部

発売日:2020年12月22日

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