
- 2021.10.26
- ちょい読み
不妊処置や収容所、習近平政権が推し進める「ウイグル人根絶」の恐るべき実態を命がけで告発
于田 ケリム (日本ウイグル協会会長)
『ジェノサイド国家中国の真実』(于田 ケリム、楊 海英)
いまウイグルで起きていることは、単なる「人権弾圧」ではなく、「ジェノサイド(集団殺戮)」です。
「ジェノサイド」などと言うと、日本の読者の皆さんは「大げさすぎる」と思われるかもしれません。しかし、決してそうではないのです。
中国も締結している「ジェノサイド条約」では、国民的、人種的、民族的、宗教的な集団の構成員に対して、次のような行為を加えることを「ジェノサイド」と定義しています。
(1)殺す
(2)重大な肉体的または精神的危害を加える
(3)集団の物理的な破壊をもたらす生活条件を故意に強いる
(4)集団内の出生を妨げることを目的とした措置を課す
(5)集団内の子供を強制的に他の集団に移す
このうち一つでも当てはまれば「ジェノサイド」とみなされますが、中国政府がウイグル人に対して実施している政策は、ほぼすべての項目に当てはまります。
二〇一七年以降、ウイグルでは、一〇〇〇カ所を超える「強制収容所」が設置され、一〇〇万人以上(アメリカ国防総省高官によれば、約三〇〇万人)のウイグル人が収容されています。
正当な理由がないまま強制収容されたウイグル人は、外部との接触が完全に断たれた劣悪な環境で、ウイグル人としての文化や伝統を放棄することを強制され、ウイグル語での日常会話まで禁止されています。と同時に、中国共産党と習近平への忠誠を強制する洗脳教育が行なわれています。
男性が強制収容された後に家庭に残された女性に対しては、「不妊処置」がなされています。文字通り「ジェノサイド」と定義される「集団内の出生を妨げることを目的とした措置」です。二〇一八年に中国で実施された子宮内避妊器具(IUD)装着手術の八〇%が「新疆ウイグル自治区」で行なわれ、さらに過酷な措置である不妊手術の件数も、「新疆ウイグル自治区」では、中国全体平均の七倍にも達しています。
その結果、中国当局の“計画通りに”ウイグル人の出生数は大幅に減少しました。「新疆ウイグル自治区」の出生率(人口一〇〇〇人あたりの出生数)は、二〇一七年に一五・八八人だったのが、二〇一九年には過去最低の八・一四人と「ほぼ半減」しているのです。これは、『新疆統計年鑑』という自治区の公式資料で確認できる数値です。
子供が無事、生まれてきたとしても、「ウイグル人」として育てることは許されません。子供の名前は、自由に付けられず、政府作成のリストによって、「モハメッド」といった「イスラーム色」のある名称などは明確に禁止されているのです。
「集団内の子供を強制的に他の集団に移す」ことも行なわれています。両親が拘束され、家に残された子供は、「孤児院」に入れられ、「両親が政治的問題を抱えている」として通常の学校に通うことも禁じられ、徹底的な「漢人化教育」がなされています。
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