不妊処置や収容所、習近平政権が推し進める「ウイグル人根絶」の恐るべき実態を命がけで告発
- 2021.10.26
- ためし読み
こうした一連の措置は、「ウイグル人を殲滅する政策」、まさに「ジェノサイド」「計画的民族殺戮」としか呼びようがないのです。
「ウイグルの現状」を私が真剣に考えるようになったのは、二〇〇九年のウルムチ虐殺(後述)がきっかけでした。それまでもウイグル人に対する弾圧は行なわれていましたが、私の目には入ってきませんでした。また目に入ってきたとしても、おそらく若さゆえに、十分には理解できなかったように思います。
二〇〇九年のウルムチ虐殺の際、私は留学生として東京工業大学大学院に在籍していました。日本で事件の報道に接して、ショックを受けたのです。中国では、こうした事件も、人づてに噂として耳にするだけですが、日本のメディアが流す映像は、あまりに生々しいものでした。事件のことが気になって、居ても立っても居られず、詳しく知ろうと、日本語、中国語、英語のサイトでニュース検索ばかりをして、半年か一年くらいは、勉強も研究も手につきませんでした。
この時、父からは「大学を卒業したらウルムチに帰ってきてほしい」と言われました。「ウイグルには、若者を育てることができる知識をもった人間が必要だ」と。私自身も、新疆大学の恩師の後を継ぐつもりでいました。恩師からは「皆が『政治』をしてもダメです。誰かが『子供を育てること』『大学で若者を教えること』をしなければならない」とも言われていました。
しかし、二〇〇九年のウルムチ虐殺で、私の人生は変わってしまいました。
私は、ペンネームではなく本名でウイグル人のための活動を日本でしていますが、そのことで、ウイグルにいる家族に当局の圧力がかかることを心配しています。同じように世界各地に住むウイグル人が、ウイグルにいる自分の家族の安否を確認できない状況が続いています。
現在、在日中国大使館は、在日ウイグル人に対して、パスポート更新手続きを受け付けていません。そのため、在日ウイグル人は、合法的な滞在を続けられず、帰国したとしても収容所行きの運命が待っています。私は、日本で活動するために、日本に帰化することを決断しました。
「自由」と「民主主義」の国である日本が、こうした問題にあまり熱心でないことが残念でなりません。中国の問題を指摘すると、「反中の右翼に利用されるだけだ」という受け止め方をされてしまうのです。
しかし、「ジェノサイド」と言える非人道的な弾圧が、日本の隣国で、現在進行形で行なわれているのです。ウイグルの現状を知っていただき、世界のリーダーの一員である日本に、明確な行動を起こしていただきたい。そう心から願っています。
私たちは、自分たちの土地を「東トルキスタン」と呼んでいます。インタビューを受ける際には、新聞社にも出版社にも、そう書いてほしいのですが、「(中華人民共和国の)新疆ウイグル自治区」と書かれても、今は仕方がないという感じです。ただ、ウイグル、東トルキスタンは、「現在は中国共産党に支配されているけれども、もともとは独立国だった」という点は、強くアピールしたいと考えています。
要するに「新疆ウイグル自治区」の存在自体を認めないのが、私たちの立場です。そのため、本書での私の発言部分については、原則として「新疆ウイグル自治区」とカギカッコで表記していますが、その意図するところをご理解いただけると幸いです。
(「はじめに」より)
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