- 2021.10.11
- インタビュー・対談
「子供は親を選べる。生きていく術を教えてくれた人も親だから」 桜木紫乃が描く、“毒親”から解放される“インモラル”な方法
桜木紫乃さん×もんでんあきこさん#2
ジャンル :
#小説
,#エンタメ・ミステリ
人生のギフト
桜木 『ブルースRed』の第5話「始まりの月」という話があって、ある男性が莉菜を抱いて去っていく話があるんです。莉菜は重いものを背負ったり、降ろしたり、いろんな感情に襲われるんですけれど、この短篇を書いたときに、『ブルースRed』は最後まで書けると確信しました。
もんでん 博人に抱かれなかった莉菜にとって、人生のご褒美があるとすれば、あの場面です。ウキウキしましたよ、読んでいて(笑)。
桜木 ご褒美って『ホテルローヤル』(集英社)では、大人のおもちゃに使われていた言葉なんです(笑)。ほかの言い方ないかな?
もんでん ギフトはどうですか? 一生に一度のギフト。
桜木 それ、いいですね。ギフトといえば、もんでんさんとお仕事ができて、嬉しかったことがあるんです。この記事でも書影が出ると思いますが、コミカライズの『ブルース』上巻のカバーの絵を見た時に感激したんですよ。小説には、そんな場面はなかったですから。
もんでん 実は、予告用のカットで、指を6本描いたら、編集部から「ダメ」と言われてしまったんです。だけれども博人の指が6本あったということは、とても重要なファクターです。そんなこんなしているときに、知人から「知り合いにも指が6本ある人がいて、いつも包帯をしていたらしい」という話を偶然聞いていて、これしかない!と。
桜木 何かに導かれている話ですよね。『ブルースRed』のラストシーンの場所を、遥か遠い場所にしようと決めた時に、なんとなく、もんでんさんに連絡したら、なんとその場所にいらして。祝福されているなぁと思ったことを覚えています。
誰よりも虚構を必要としているのは書き手
もんでん あまり言うとネタバレになりますが、どこかで出てくる野生の蜜柑の場面も、私は大好きです。野生の蜜柑っていうのは、自分で勝手に熟れて、勝手に落ちて、勝手に腐るものなんです。まさに、莉菜そのものだと思いました。
桜木 誰よりも虚構を必要としているのは書き手なんですよね。思えば私は、読者のことを考えずに書いているのかもしれない。小説に必要な答えを見失ってしまうような気がして。たぶん物語のことしか考えていない。小説は、自分にとっての答えが欲しくてやっていることなんです……。
もんでん 私もそうですよ。私が一番読みたい物語を描こう、と。
桜木 もんでんさんの『エロスの種子』第5巻も7月に発売されました。『ブルースRed』と合わせて、『エロ種(たね)』もよろしくお願いします。
もんでん 『エロ種』なんて呼ぶのは、桜木さんだけですよ(笑)。何かのおつまみみたいですけれど。まあ種子って、発音しにくいかもね。
桜木 柿の種ならぬ、エロ種で。浸透させたいです(笑)。
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桜木紫乃(さくらぎ しの)
作家。1965年北海道生まれ。2002年「雪虫」で第82回オール讀物新人賞を受賞。07年、同作を収録した『氷平線』で単行本デビュー。13年『ラブレス』で第19回島清恋愛文学賞、同年『ホテルローヤル』で第149回直木賞、20年『家族じまい』で第15回中央公論文芸賞を受賞。『風葬』『起終点駅(ターミナル)』『裸の華』『砂上』『ふたりぐらし』『光まで5分』『緋の河』『俺と師匠とブルーボーイとストリッパー』『Seven Stories 星が流れた夜の車窓から』(共著)、絵本『いつか あなたを わすれても』(オザワミカ・絵)など、著書多数。
もんでんあきこ
北海道出身。1983年のデビュー以来、少女誌から青年誌まで幅広く活躍している。代表作は、累計140万部突破のベストセラーとなった『エロスの種子』(2021年9月現在1~5巻発売中)。圧倒的画力と巧みなストーリーで描かれる、優しくて強くてときに脆い男女のオムニバスは、雑誌「グランドジャンプめちゃ」にて大好評連載中。他著に『竜の結晶』(集英社)、『アイスエイジ』(集英社)など。
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