WBC日本代表監督選考会議は9月から数回招集され、10月半ば時点までには北京五輪で指揮を執った星野仙一氏の就任が既定路線となっていた。
「大切なのは足並みをそろえること。(惨敗の)北京の流れから(WBCを)リベンジの場ととらえている空気があるとしたら、チームが足並みをそろえることなんて不可能でしょう」
星野監督が北京五輪準決勝での韓国戦に臨む前、「リベンジしますよ」と語っていたことで、このイチロー発言が“星野外し”を意図したものと一部では受け止められた。しかし以前から「五輪はアマチュアのもの、WBCはプロで戦うもの」と線引きしていた彼は、そんな狭い視野でこの問題を考えていなかった。
「誰が監督で、どんなメンバーで戦うかよりも、これからどうしていくべきなのか、そういう大きな視点を持って(選考会議に臨んで)いるかどうかが問題なんです」。日本野球で培ったプライドと、そこで育った者としての熱い想いが彼を突き動かしていた。
ユニホームを着る限りは、必ず何かを背負わなきゃいけない
一連のコメントは大きな反響を呼んだ。「一選手が口を挟むことではない」との批判がわき起こる一方で、一部の北京五輪代表メンバーから支持が寄せられた。そして王貞治コミッショナー特別顧問が「(イチローの主張に)なるほどね、と思う」と理解を示したことで潮目が変わる。イチロー発言の3日後、星野氏が自身のHP上でWBC代表監督就任を引き受ける意思がないことを改めて表明。最終的には経験値の高さなどが買われ、2008年セ・リーグ優勝の巨人・原辰徳氏が代表監督に落ち着く。第2回大会は、日本代表が集まる前から何かと騒がしかった。
自分の言葉が監督決定までの流れを変えたと思うか。もしそう感じたのなら、新たなプレッシャーが生まれたのではないか―。原・日本代表監督が決まってから約1カ月後にイチローに尋ねると、「そもそも(発言の前と後で日本国内の状況が)どうなっているのか僕は(詳しく)知らない。でも、あの(日本代表の)ユニホームを着る限りは、必ず何かを背負わなきゃいけないということです」と言った。
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