- 2021.11.24
- インタビュー・対談
「皇室制度ははかない存在で、知恵と力を絞らなければ滅びていく」 林真理子が“皇族の結婚の小説”で描きたかったこと
いつの時代も「高貴なる方々のご成婚」は世間の注目の的だ。明治の終わりから大正にかけて、娘である方子(まさこ)妃の結婚相手探しに尽力した皇族の梨本宮伊都子妃を主人公に、戦前の皇族・華族の結婚問題を描いた『李王家の縁談』が発売された。著者の林真理子さんは自他共に認める“皇族・華族フェチ”。執筆の舞台裏や、書き上げたからこそわかった現代の皇室の難しさについて語った。
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皇族の歴史の流れを知る必要があると考えた
――つい最近、秋篠宮家の長女眞子さんが小室圭さんと結婚しました。梨本宮方子女王の結婚を描いた『李王家の縁談』は、時宜を得た刊行になりましたね。
林 いろいろな方に「狙ったでしょう?」と言われますが(笑)、この時期に刊行となったのは本当にたまたまです。3年前から書きたいと思っていたテーマなんです。
――書くきっかけは何だったのでしょう?
林 旧宮家の復活や女性宮家の創設など、皇位継承問題についてさまざまな議論がされていますね。けれど、多くの方が皇族の成り立ちをご存知ないのではと感じました。そもそも幕末近くまで宮家は伏見宮、桂宮、有栖川宮、閑院宮の4家しかなかったんです。皇位を継がない男子は出家すると決まっていた。けれど明治維新のうねりの中で彼らは次々と還俗し、新たに宮家をたてた。身分も公家筆頭の五摂家(近衛、九条、一条、二条、鷹司)より下だったのが、維新によって変わった。そんな歴史の流れを知る必要があると考えたのです。
皇室はある種はっきりした冷酷な世界
――そこで焦点を皇族の結婚に絞ったのですね。
林 今回書いたことで、いろいろな謎が解けました。例えば『徳川慶喜家の子ども部屋』(榊原喜佐子著)という本がベストセラーになったのを覚えていますか。最後の将軍慶喜のお孫さんが戦前の華族の暮らしを書いた本ですが、お姉さんは高松宮家に嫁ぎ、妹さんは新潟の元藩主に嫁いでいる。この差は何だろうと思っていたんです。すると、昔は正妻の子も妾腹の子も一緒に育てられるんですが、ただし、縁談で歴然とした差がつく。
――本書にも出自によって扱いが違う事例がいくつか出てきます。下々とは隔絶した観念で暮らす様子もよくわかります。
林 ある種はっきりした冷酷な世界です。今の道徳では割り切ることはできない世界があったということです。
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今月号では林真理子さんと磯田道史さんが近代日本の「皇室の縁談」を徹底解説! 特集は〈時代小説大賞2021〉と〈警察小説最前線〉。
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