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私は現在、「社会調査支援機構チキラボ」という団体で、社会を改善したいという当事者を支援するため、調査と広報面でお手伝いするという活動を行っています。2020年、知己であった内澤さんからの相談をきっかけに、チキラボでストーカー被害の実態調査を行い、報告書を作成することになりました。その上で、内澤さんと記者会見を開き、国会議員へのロビイング(陳情活動)も行いました。ロビイングでは、「こういう法改正をしてください」「こういう国会質問をしてください」ということを、具体的に届けてきました。
内澤さんが相談してきた理由は、2020年当時、GPS無断設置の違法化を始め、必要なストーカー規制法の改正論議が、まったく盛り上がっていなかったためです。GPS無断設置の違法化だけでなく、ストーカー対策にはさまざまな穴が空いていることを、内澤さんは嫌というほど思い知っていました。なのに、その穴を埋めるような動きがなかなか出てこない。そのことに業を煮やしたと伺いました。
内澤さんがストーカー対策に求めるものは多くありますが、規制法の改正に求めるものとしては、「恋愛要件の撤廃」や「加害者治療の義務化」などがあります。
チキラボの調査では、ストーカー被害を受けた相手のうち、(元)結婚相手や(元)交際相手によるものは3割程度。多くは恋愛関係にない相手から行われています。さらに、全体の3割程度は、ほとんど知らないという相手から行われていました。ストーカーの被害者は「別れるのに失敗したからだろう」などと心ない言葉をかけられることがありますが、実際には、恋愛感情に関わらず、想定し難いストーカー被害で溢れています。
特に加害者治療に関しては、現状はほとんど行われていません。しかし被害者が求めるのは、短期的な懲役刑そのものというより、長期的な身の安全です。治療によって、自分への執着という行為依存が取り除かれることがあって、ようやく加害が収まるのです。
本書にもあるように、警告や禁止命令が行われたストーカー事案については、6~8割で、つきまとい行為が止まると報告されています。しかし逆に、警告や禁止命令が行われてもなお、つきまとい行為を止めない加害者が相当数いる、ということも事実です。だからこそ、適切な治療は、急務であると言えるでしょう。
ストーカー行為罪や禁止命令違反罪は、重くても懲役2年です。また、こうした「軽い」刑法犯で検挙しても、起訴猶予になるか、罰金や単純執行猶予となることも少なくありません。これは言うなれば、「被害者にとって安心できる猶予期間」が、極めて刹那的であることも意味します。
「恋愛要件の撤廃」と「加害者治療の義務化」については、2021年の法改正では盛り込まれませんでした。必要ないと考えられたから、ではありません。委員会で審議していたほとんどの議員は、これらの必要性を適切に認識していました。だからこそ、「附帯決議」という、法律への注意書きのようなものには「加害者の治療及び更生の支援」が盛り込まれたのです。
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