- 2022.05.03
- 特集
“恋愛経験なし”の42歳男性が年下女性に恋をした…一歩を踏み出せない男性に作家・伊集院静が“贈る言葉”「それが男と女というものだ」
文:伊集院 静
『大人への手順』より #2
作家・伊集院静氏が週刊文春で連載している“辛口”人生相談「悩むが花」。その名回答の数々をジャンル別にまとめて書籍化したのが、『大人への手順』(文藝春秋)だ。
ここでは同書から一部を抜粋し、恋愛相談に対する伊集院氏の回答を紹介。彼女の本性を知った25歳の男性や、恋愛経験がない42歳男性、72歳でプロポーズを考える男性の“恋の悩み”に、伊集院氏はどう答えるのか――。(全2回の2回目/1回目から続く)
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結婚予定の彼女の素顔は「鬼の形相」
結婚を前提にお付き合いしている恋人がいます。ところが、先日、彼女が病院で受付業務をしている姿をたまたま目にしました。言葉が聞き取りにくい高齢の患者さんに思い切り不快な表情を向けていたり、呼んでも来ない患者さんに怒鳴り声をあげるなど「鬼の形相」を目の当たりにして動揺が隠せませんでした。以来、彼女に甘い言葉を囁かれ、濃密な夜を過ごしても気持ちが冷めてしまいます。彼女と生涯を共にするのは控えるべきでしょうか。(25歳・男・会社員)
そりゃ君の言うとおりだ。その女性と生涯を共にするのはおやめなさい。君がそれまで知らなかった彼女の面を知ることになったのは、あなたと彼女の運命と思った方がイイでしょう。
“鬼の形相”も、偶然あらわれたものではなく、元々、彼女の中にあったもので、あなたの前で見せなかっただけです。
それをあなたが知らなかった一面と考えるべきではありません。“鬼の形相”も、怒鳴り声も、彼女の一面ではなく、彼女の生き方、そのものです。だから、その顔を見たことは不運でもあり、不幸でもあり、実は好運なのかもしれません。
知らなかった表情を見たなどとは考えずに、彼女が若い1枚の葉としたら、それは根のカタチを見たと考えるべきでしょう。
このようなことが世間でよくあるとは思えませんが、逆の場合もあることを知っておいた方がイイでしょう。
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