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編集長が語る【オールの讀みどころ】 11月号「絶対、『小説家』になる!」は4人の作家の特別講義が凄すぎる……

編集長が語る【オールの讀みどころ】 11月号「絶対、『小説家』になる!」は4人の作家の特別講義が凄すぎる……

文:「オール讀物」編集部


ジャンル : #小説 ,#エンタメ・ミステリ ,#歴史・時代小説

「本の話」を読んでくださっているみなさん、こんにちは!

 7月から「オール讀物」の編集長をしている石井と申します。いつもご愛読ありがとうございます!

 新たなメンバーを迎えて5人の精鋭(?)でオール讀物をつくっています。私や部員の紹介、日ごろ編集部で起きている事件についてはnote連載の編集部だより「オールの小部屋から」で週イチ発信しておりますので、ぜひチェックしてください!

 こちら「本の話」の月イチ連載「オールの讀みどころ」では、最新号について、編集部員がどんなところに力を入れたか、渾身の企画を紹介していきたいと思っています。

 というわけで、オール讀物11月号です。

「オール讀物」11月号

 最大の目玉は、総力特集「絶対、『小説家』になる!」。一線で活躍されている作家のみなさんが、特別講義をしてくれました。

 石田衣良 IWGP25年 ぼくの作家サバイバル術
 凪良ゆう 『汝、星のごとく』私はこう書いた
 米澤穂信 「警察×本格ミステリ」書き方講座
 今村翔吾 新人作家のリアルな悩みに答える!

 作家がふだん、いかに着想を得て、いかに形にしていくか――。四者四様、とっておきのメソッドを惜しげもなく披露してくれているのですが、私が個人的に感銘を受けた各講座のポイントをほんの少し紹介しますと……

 石田さんの語る、鬼平犯科帳に学ぶ「シリーズを長くつづける秘訣」は、同業の作家も感心するほど斬新で、衝撃的です。

 凪良さんは、1冊の本が生まれ、多くの読者に読まれていく過程に、編集者や書店員がいかに関わるか、一端を明かしてくれました。編集者や書店員さんの表には見えてこない仕事ぶりが窺えて、格好の職業案内としても読めます。聞き手を、『汝、星のごとく』の担当編集者である講談社「小説現代」編集長の河北壮平さんにお願いしたのですが、他社のライバル編集者の「原稿依頼の口説き文句」には、思わず私もメモをとりました。

 米澤さんは、多くの警察小説や名作ミステリに言及しながら、最新作『可燃物』がどのように生まれたかを丁寧に解説しています。先人や古典から「どう学ぶか」――ここで語られるのは、“書き方”であると同時に、実践的な“読み方”でもあります。ちなみに本企画は、ミステリ好き&米澤ファンである私が聞き手を務めました。役得ですね。

 今村さんの「悩み相談」は、オール新人賞出身の若手作家4人から質問や悩みを募って実現した好企画(手前味噌ですが)。前職であるダンス講師の知見が剣戟やアクションシーンを書く上で役に立ったと明かす今村さんからは、読書遍歴、社会経験、どんなことも小説のために生かし切る貪欲さを感じて、思わず背筋が伸びました。

悩み相談に答える今村翔吾さん ©文藝春秋

 4人の個性あふれる講座を通読して思うのは、「書いて書いて書き続けられる人だけが生き残るのだな」という当たり前のことだったりします。1冊の新書になってもおかしくない充実の講義録。この講座をきっかけに、創作にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。

 11月号といえば、毎年恒例、オール讀物新人賞発表です。664編の中から栄冠に輝いた小林尋さんの「かはゆき、道賢」は、SFマインドが横溢した“室町裏面史”。かつて熱狂的なSF青年だった小林さんの蓄積が、一見、全く異なるジャンルのようにも思える歴史小説を書く際の、大きなエネルギーになったことがわかります。受賞作はもちろん、ジャングルをさまようような(!)小林さんのグラビア&インタビューも必見です。

文春ジャングルをさまよう小林尋さん ©文藝春秋

 この写真、実は文藝春秋の裏庭で撮影しているんです。ベテラン社員でもどこにあるか知らない草木生い茂るジャングル。なかなかたどり着けず、たどり着いたら今度は元いた場所に戻れない……。魔の文春ジャングルは、乱世、濁世を描いた受賞作のイメージにぴったりかもしれません。

 ほか、近年のオール新人賞受賞者のみなさんが、新作をひっさげて登場しています。

 高瀬乃一「往来絵巻」(貸本屋おせん)
 由原かのん「よしやわざくれ」(おりせ人形噺)
 出崎哲弥「紅い板」(新聞記者・赤羽萬二郎)
 佐々木愛「ジョブズ忌の夜」
 米原信「牡丹菊喧嘩助六」

 
 いずれも次代を狙う気鋭の作家ばかり。読み比べて、いまのうちに「推し」を見つけてみてはいかがでしょうか。

 歴代受賞者競作では、大ベテラン赤川次郎さんの幽霊シリーズ新作「昨日、今日、あさって」や、石田衣良さんの池袋ウエストゲートパーク新作「西池袋バッテリーブギ」も! マコトとタカシの涙なくしては読めないやりとりは必読です。

 芸能に強いのもオール讀物ならでは。坂東玉三郎さんのインタビュー「歌舞伎界に残したいもの」は真山仁さんが聞き手を務め、原稿を書いてくれました。玉三郎さんと社会派作家・真山仁さんとの異色のコラボレーションをお楽しみください。ちなみに「文學界」11月号でも真山さんの連載「秘すれば花――玉三郎の言葉」が始まっています。

 東海林さだおさん、緊急入院からついに復活! 久しぶりの「男の分別学」は「『ドヤ顔』大研究」です。若手編集部員のSさん(東海林さんとは64歳差!)が果敢に収録したポッドキャスト「85歳の現役漫画家・東海林さだおさんが語る、緊急入院の舞台裏」もぜひお聴きください。

東海林さだお「『ドヤ顔』大研究」より

 まだあります! 前号の連載第1回が話題騒然、某出版社では「先生、サインペンはこちらでよろしかったでしょうか」と、天羽カインごっこまで起こったという村山由佳さん「PRIZE-プライズ-」第2回は、「直木賞が欲しい」と切望する女性作家がついに文春の編集者、それもオール讀物の編集長に思いを吐露します。虚構が現実へと侵食する巨弾連載の行方から目が離せません。

「PRIZE-プライズ-」が話題の村山由佳さん ©文藝春秋

 さらに! 北方謙三さん、夢枕獏さん、宮城谷昌光さん、恩田陸さんといったベテラン勢から、新鋭・五十嵐律人さん、遠田潤子さんまで、すべて読み切り小説を掲載し、本に換算すれば4~5冊分の中身がぎゅっと詰まったオール讀物11月号ですが、もうひとつ大事なお知らせが!

「絶対、『小説家』になりたい」方に向けて、11月号をテキストにした「歴史時代小説書き方講座2023」(講師・門井慶喜+ゲスト作家3名)をオンライン開催します。

 ■12月9日(土)16時から18時まで(アーカイブあり)

 オール讀物11月号をセットでお送りする上記講座チケットを、10月下旬、hontoさんより発売します(詳細はこちら)。私たち編集部員も登壇して、お役に立てる講座にします。多くの方のご参加をお待ちしています!


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定価:1,100円(税込)発売日:2023年10月20日

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