- 2024.03.19
- 読書オンライン
「セックスによって脳は鍛えられる」最新脳科学の新常識で、あなたの脳はもっと賢く健康になる!
「本の話」編集部
『世界の最新メソッドを医学博士が一冊にまとめた 最強脳のつくり方大全』が教えてくれること #2
〈「座りすぎは、脳の老化を早める!」最新脳科学の新常識で、あなたの脳の健康は維持できる!〉から続く
「セックスによって脳は鍛えられる」——「性欲」と「脳」についての驚くべき関係性が、世界中の科学者たちの研究で明らかになっているという。
脳に関するありとあらゆる研究成果に目を通し、脳の健康にとって重要なことを一冊にまとめた『世界の最新メソッドを医学博士が一冊にまとめた 最強脳のつくり方大全』(ジェーズ・グッドウィン著、森嶋マリ訳)から「脳の健康を保つセックスの方法」「頭がよくなるセックスの方法」を紹介します。
古代ギリシャ時代、「性行為は健康によい」とされてきた
人間にはさまざまな欲求があります。
金銭欲、名誉欲など、細かくいえばキリがありませんが、人が生きる上においての3大欲、というものがあります。
食欲、睡眠欲、そして性欲です。
食欲と睡眠欲は、生命維持のために欠かせない要素。
そして性欲は、生命の種の保存と切りはなすことのできない、きわめて原初的な、強い衝動といっていいものでしょう。
実は、古代ギリシャの医学書には「性行為は健康に良い」という記載がいくつも見受けられます。また、アテネの法律には、すべての女性が男性とカップルになることに異常にこだわった条文があるのですが、古典学者のコンスタンティノス・カパリスは『アリストファネス、ヒポクラテス、性に飢えた女たち』という論文に、こんなことを記しています(アリストファネスは古代ギリシャの大喜劇作家、ヒポクラテスは医学の父とも称される古代ギリシャの医師)。
「医学書、喜劇、アテネの法律は、心身の健康とバランスを保つために、女性には定期的な性行為が必要であるという点で一致している。アリストファネスが描いた女たちは、立派ではあったが性欲は強かった。それは女性の本来の姿で、男性のペニスは単なる快楽の道具ではなく(快楽も恥じることではないが)、健康な生活を送るために必要なものだった」
脳の研究などまったく進んでいない時代であっても、すでにして「バランスのとれた性行為は健康と幸福、健全な精神のためにも男女ともに必要な行為だ」という認識があったのです。
一方で、野放図な性欲は社会の秩序を乱す原因となります。だから社会は時代時代でさまざまな規範をつくり、道徳観を醸成することで、性行動を制限してきました。中世以降のキリスト教会によってあらゆる欲望が禁じられ、聖職者は禁欲を余儀なくされ、性がタブー視されていったことは、みなさんもご承知のことでしょう。
そして近代になると、さまざまな形で「性の解放」が起きていくのと並行して、性行為や性欲について、より科学的なアプローチがなされるようになりました。
その過程で、性行為と心身の健康、脳との関係もすこしずつ明らかになってきたのです。
肝心の脳機能との関わりは後述するとして、ここではまず性行為と健康全般の関係について、これまでの研究成果の中で注目すべき点を列挙してみます。
・男性の場合、射精回数が多いと前立腺がんにかかりにくい。
・男女ともに、定期的な性行為は、安静時の心拍数や血圧を下げ、心血管疾患を予防する。
・性交の頻度は代謝に多くのメリットがある。肥満防止、心拍反応の改善、男性ではテストステロン値の向上、女性では更年期の症状の緩和につながる。
マスターベーションも含めた性行為が健康と長寿に役立つことが、すでに明らかになっているのです。
高齢のラットの脳が、性行為で若返った!
では、脳と性行為の関係はどうなっているのでしょうか。
一般に運動は、ストレスホルモンの分泌を促す(体に負担になる行為ではあるため)一方で、長期的な健康効果があり、学習能力や記憶力が向上する、という効能があります(詳しくはこちらの記事を)。
では性行為はどうなのでしょう。
ここで、ラットによる実験の結果を記します。
・雄のラットに、発情期を迎えた雌のラットと、1度だけ交尾をさせると、雄のストレスホルモンは上がる一方、脳内の細胞が増えた。つまり、ストレスはかかるが、脳に良い影響がある。
・雄のラットに、発情期を迎えた雌のラットと、何度も交尾ができる環境を作ると、1度だけのときと比べてストレスホルモンは減り、脳内の細胞はより増えた。
・高齢のラットが2~4週間、毎日欠かさず交尾をすると、同じ状況にある若いラットと同程度、脳内の細胞が増えた。
つまりラットの場合、年齢に関係なく、性行為による脳へのよい効果はある、ということなのです。
パートナーとの親近感で、効果が変わることも判明
それでは、人の場合は?
2016年、オーストラリアで50歳以上の6000人分のデータを分析して、中高年以上の性行為が脳にもたらす影響を調べた研究結果は、こういうものでした。
・人との交流が深まる性行為が、認知力低下を防ぐ。
・性行為による脳への健康効果(神経発生を促すホルモンであるオキシトシンの分泌量)は、パートナーへの愛着や信頼があればあるほど増える。
ラットによる実験結果と同じような効果が見られただけでなく、パートナーとの親密な度合いもその効果に影響することがわかってきたのです。
他にも、性行為と脳の関わりについてわかっていることはたくさんあります。
・年齢に関わりなく、性的に活発な人の方が記憶力がよい傾向にある。
・定期的に性行為を行っている50~89歳の人は、そうでない人より、知能検査の成績がよい(女性は記憶力テストで、男性は記憶力テストと数学テストで高得点をとる)。
・性交の頻度は、言語能力の高さと関連している。
・主要な性ホルモン(テストステロン、エストロゲン)は、生涯を通じて脳に有益で、脳を守ってくれる。
ここに挙げたのは一部でしかありません。併せて本書では「性行為と脳の健康のためにすべきこと」というリストが紹介されています。
性行為、「愛のある」セックスこそ、脳に効くのです。
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