- 2024.04.17
- 読書オンライン
「つまらない本は投げ出していい」「宿題のように本を読むな」日本人が意外と知らない「正しい本の読み方」
ジョー・ノーマン
『英国エリート名門校が教える最高の教養』より #1
英国の名門パブリックスクール卒業者が伝授する「正しい本の読み方」とは――。ジョー・ノーマン氏は、英国最古の名門パブリックスクール(中高一貫校)であるウィンチェスター・カレッジで学び、オックスフォード大学に進学。現在は英国名門パブリックスクール専門の受験教師として活躍している。ここではノーマン氏の新刊『英国エリート名門校が教える最高の教養』(文藝春秋)より一部抜粋してお届けする。(全2回の1回目/後編を読む)
◆◆◆
わたしが勧めたいのは、いいと思うものを読んでみること。
これはいいかもという本が一冊もなければ、どんなリストも最初は隅々までチェックする必要はない。読みたいと思う本が見つかれば買ってみよう。あるいはありがたいことに、ほかの人に買ってもらえることもある。近くの図書館で借りることもできる。
本はすべて買って読む必要はないが、わたしは興味がある本を目にすると、図書館では借りずに買ってしまう。というのは、わたしは本のページを折ったり、何か書き込んだりすることがよくあるからだ。図書館の本にそんなことをしても今は罰金を科されるくらいですむが、1960年代に劇作家のジョー・オートンとパートナーのケネス・ハリウェルは、イズリントン公立図書館の本数冊に(おかしな)落書きをしたとして収監された。
読書は好き勝手にするもの
本は何時間も読まなければならないというものではない。読書は走力を競いあうようなものではないのだ。慈善行為でもない。誰かのために本を読む必要もない。読書は完全に自分だけのものだし、そうでなくてはならない。ひとり好き勝手に行うものだ。
毎日、毎週末、就寝前など、好きな時に、読みたいと思うものを、自分のペースで読んでみよう。
『パワー』や『ハリー・ポッター』を読んでみるのもいいだろう。常に心に留めておいてほしいが、ほかにも本はあるし、昔書かれたものの中には何冊か(はっきり言えば、たくさん)すぐれたものがある。
いつも本を速く読もうとする人は、詩篇や古典を少しゆっくりと味わってみるといいかもしれない。その場合、理解力を磨く必要があるだろう。十分な理解力が伴わないと、その良さがよくわからない。ストーリー(物語)も話の流れを追うだけではない。どちらが速く最後のページにたどり着くか、誰かと競いあうようなものではないのだ。大切なのは、ほかの人の気持ちになって(トールキンの作品を読めば「ホビット」の気持ちになって)過ごしてみることだ。
できる範囲で構わないから、そのようにしてなるべく本と長く過ごしたい。残りのページ数が十ページを切ったところでお腹に痛みのようなものを感じることがあれば、読むべき本を読んでいると考えて間違いない。その本を急いで読み終えようとしてはいけない。好きな本はいつでも読み直せるが、読まなかった状態に戻すことはできないからだ。一度読んでしまえば、もう元に戻すことはできない。
つまらないと感じる本は、投げ出してもよい
本が自宅に届いたら、あるいは地元の図書館で本を見つけたら、次のようにしてみよう。
その本が届くのを待っているあいだ、書名があなたの頭の中をよぎることがあったと思うが、本を開いて、最初のページを、あるいは次のページを読んでみよう。
やっぱり心がつかまれるか?
であれば、読み進めよう。腰をおろして読むのがいいが、最初のページあるいは次のページを読んで響くものがなかったら?
であれば、いつもしないようなことをしよう。(きっと)すでに耳にしていると思うが、いつもするようなことをいつもしていれば、人生はつまらなくなるからだ。
すべて読む必要はない。惹かれない本は読まずに投げ出してしまおう。その本は10年後も手に入るし、その頃はあなたも変わっていて、ひょっとするとその本を楽しく読めるかもしれない。でも、今は放り出してしまおう。あきらめが肝心だ。でも、そのあいだに別のことをしてほしい。非常に重要なことだ。
ほかの本を探すのだ。
わたしは読者の皆さんにさまざまな本を勧めているが、実は9割しか読了できていない。(古すぎる、長すぎる、あまりにも奇妙であったり退屈であったりしたといった理由で)一割は投げ出しているのだ。いつか自分が放り出してしまった本にもう一度挑戦したい。その前に死んでしまうかもしれないが、急ぐ必要はない。
宿題のように本を読む必要はない
また、宿題のように本を読む必要はない。読書に疲れていないか? であれば、リヴィングでテレビを観てもいいし、ネットをチェックしてもいいし、ほかの人間とおしゃべりしてもいい。テレビやネットや人間からも、知りたいことがたくさん学べる。
何か気になる、尊敬する人が勧めているという本があれば、どれも読んでみよう。そのうちの一冊に、あるいは本書に収録した「教養のための必読リスト114冊」に挙げた一冊に惹かれたということがあれば、ほかのことはすべて忘れてその一冊を読み進めよう。すでにこの世にいない著者はみんな自分の作品を手に取ってもらえることをひたすら望んでいる。やっと自分の本が読んでもらえるのだ。
〈「ディスプレイは広告だらけ」「文明が崩壊しても紙の本は読める」英国人エリートが「本を電子書籍では読まない」理由〉へ続く
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