- 2024.04.17
- 読書オンライン
世界大学ランキング1位、オックスフォード大学の英国エリートが選ぶ「教養書ベスト10」【ノンフィクション編】……『サピエンス全史』『21世紀の資本』『利己的な遺伝子』がランクイン!
ジョー・ノーマン
『英国エリート名門校が教える最高の教養』より #3
〈「ディスプレイは広告だらけ」「文明が崩壊しても紙の本は読める」英国人エリートが「本を電子書籍では読まない」理由〉から続く
イギリスのパブリックスクール(名門中高一貫校)をご存知だろうか。卒業生の多くが、世界大学ランキング1位のオックスフォード大学やケンブリッジ大学へ進学。イギリスの歴代首相を40人近くも輩出し、映画『ハリー・ポッター』のロケ舞台にもなった。秘密主義に包まれたその教育の奥義を明かした『英国エリート名門校が教える最高の教養』(ジョー・ノーマン著)がこのたび発売され、話題を呼んでいる。著者自身もイギリス最古の名門パブリックスクールで学び、オックスフォード大学へ進学した経歴の持ち主だ。本書に収録された「秘伝の読書リスト114冊」のなかから、教養の礎となるノンフィクション10冊をセレクトし特別に公開する。
◆◆◆
1 『国家』(上・下)プラトン 岩波文庫
「ヨーロッパ哲学の伝統は、プラトン哲学の脚注に過ぎない」(アルフレッド・ノース・ホワイトヘッド)。プラトンは『国家』で理想的な国家像を提示するが、哲人王は民主主義よりもすぐれている、子供たちは出生時に親から引き離される、「高貴な嘘」によって下層階級の秩序が保たれているといった、ややファシズム的なものも読み取れる。
2 『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』マックス・ヴェーバー 岩波文庫
プロテスタントが多い北ヨーロッパは、カトリックが多い南ヨーロッパより裕福だ。なぜならプロテスタントは勤勉と貯蓄と自己規律によって天国に召されると信じているし、勤勉も貯蓄も自己規律も資本主義の美徳であるからだ。
3 『21世紀の資本』トマ・ピケティ みすず書房
数世紀にわたる税務記録を見れば、資本(物を所有すること)が労働(生計のために働くこと)以上に常に利益をもたらすことがわかる。ゲームは最初から仕組まれているのだ。そんなことはないと思われていたが、確かにそうであると本書で確証が得られる。
4 『WEIRD(ウィアード)「現代人」の奇妙な心理』(上・下)ジョセフ・ヘンリック 白揚社
民主主義がヨーロッパで広がり、ほかの地域で広がらなかった理由は、カトリック教会が西暦五〇〇年から一五〇〇年にかけて、いとこ同士の結婚を禁じたからだ。その結果ヨーロッパでは、家族や氏族の結びつきが強い地域では見られない、「見知らぬ人たちとの結婚」が広まることになった(「奇妙な」の英語はweirdで、Wはwestern[西洋の]、Eはeducated[教育を受けた]、Ⅰはindustrialized[工業化された]、Rはrich[裕福な]、Dはdemocratic[民主的な]を示す)。
5 『サピエンス全史 文明の構造と人類の幸福』(上・下)ユヴァル・ノア・ハラリ 河出文庫
『ホモ・デウス テクノロジーとサピエンスの未来』(上・下)ユヴァル・ノア・ハラリ 河出文庫
どちらも頭からすべて読むというより、手軽に読み進めるのがいい。ホモ・サピエンスは「川の近くにライオンがいる」と思い込むことでたがいに協力できるようになったとする章や、フランスの自動車メーカー、プジョーの物語を人々がいかに信じるようになったかを説く章(ともに『サピエンス全史』第1部「認知革命」)など、実に読み応えがある。
「政治」と「軍事」の本質が学べる古典とは?
6 『ホーキング、宇宙を語る ビッグバンからブラックホールまで』スティーヴン・ホーキング ハヤカワ文庫NF
二十世紀屈指の偉大な思想家による物理学の本。概念的な難解さはあるが、随所に盛り込まれたエピソードに畏敬の念を覚えずにいられないし、愉快な話も楽しめる。
7 『フェルマーの最終定理』サイモン・シン 新潮文庫
十七世紀に数学者フェルマーが残した数学界最大の超難問「フェルマーの最終定理」に、二十世紀の数学者が挑戦する。直角三角形の斜辺の長さをc、ほかの二辺の長さをa、bとすると、a²+b²=c²の三平方の定理が成り立つ(ピタゴラスの定理)が、フェルマーは2よりも大きな自然数nについて、an+bn=cnをみたす自然数の組み合わせ(a、b、c)は存在しないという定理を残した。この定理は確かだと、証明できるのだろうか?
8 『利己的な遺伝子』リチャード・ドーキンス 紀伊國屋書店
「輝けるベストセラーであると同時に革命的な科学書」と称される本書は、ダーウィンの「生き残るのは変化に最もうまく対応できる者」という考えを超えて、競争は一人ひとりの行動のみならず、遺伝子の世界でも行われている、と説く。
9 『ファスト&スロー あなたの意思はどのように決まるか?』(上・下)ダニエル・カーネマン ハヤカワ文庫NF
どこからでもよいから、一度に五から十ページくらいずつ読んでみよう。ダニエル・カーネマンは二〇〇二年のノーベル経済学賞受賞者であるが、本書を読めば、なぜ人は思考の過程において愉快な間違いをいくつも犯してしまうのか理解できるし、自分はそんな間違いをいくつもせずにおそらくすむ。
10 『国際秩序』(上・下)ヘンリー・キッシンジャー 日経ビジネス人文庫
ヘンリー・キッシンジャーは一九二三年、ユダヤ系ドイツ人の家庭に生まれ、一家は一九三八年にアメリカ合衆国へ移住した。一九四三年に同国に帰化し、同年に大学の学業を中断してアメリカ陸軍に入隊、ヨーロッパ戦線の対諜報部隊軍曹として従軍。その後、リチャード・ニクソン、ジェラルド・フォード大統領の大統領補佐官として五十年以上外交政策を掌握。キッシンジャーは多くの左派には冷酷な戦争仕掛人であり、民主主義の敵と思われている(一九七三年のチリ・クーデター画策は一例に過ぎない)。だが、これは歴史を作り出す方法を知る者による歴史の「ユーザーマニュアル」として読めばいい。ちなみに
『君主論』ニッコロ・マキアヴェッリ 岩波文庫
『リヴァイアサン』(1~4)トマス・ホッブズ 岩波文庫
『新訂 孫子』孫子 岩波文庫
の以上三冊は、どれもヘンリー・キッシンジャー『国際秩序』と同じ趣旨のもの。政治と軍事力の効力と限界について記されているが、古典であり簡潔である。
※(1)~(10)については、順不同です。
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