――2015年から制作がはじまった、時代劇専門チャンネルオリジナル時代劇シリーズ「三屋清左衛門残日録」ですが、今作の「永遠の絆」で9作目を迎えました。改めて振り返ってみて、いかがでしょうか。
北大路 ここまで続けてこられたのは、ひとえに時代劇を愛してくださるファンの皆様がいたからだと思います。ものすごく貴重で、ありがたい存在です。そして皆様の愛情や応援の気持ちが、しっかりと現場にも伝わっていて、ふわーっと降り注いできます。なので撮影現場の雰囲気が、とてもいいんです。
本作は、藤沢周平の傑作小説を原作とした大人気オリジナル時代劇シリーズ。北大路演じる前藩主用人の職を退き隠居した三屋清左衛門を主人公に、移ろいゆく季節のなかで変わらない人の想いや人間模様が温かな視点で描かれている。
最新第9作「永遠の絆」では、『三屋清左衛門残日録』(文春文庫)に、「切腹」(新潮文庫『龍を見た男』所収)、「木綿触れ」(新潮文庫『闇の穴』所収)の世界を融合させている。
「三屋清左衛門残日録 永遠の絆」あらすじ
清左衛門は亡き妻の墓参の帰り、小さな墓前に立ち尽くす若い夫婦、結城友助(佐藤流司)と妻・はなえ(山谷花純)に出会う。二人は1年ほど前に幼い息子を亡くし、深い悲しみに沈んでいた。友助ははなえに絹の反物を贈り、はなえも一時は元気を取り戻したように見えた。一方、富商・能登屋(上川隆也)の支援を受け進められていた藩の開墾工事が突如中止に。その指揮を執っていたのは、佐伯熊太(伊東四朗)の旧友・榊甚左衛門(藤岡弘、)だが、その榊が切腹したとの報せが届く。清左衛門と熊太は榊の死に疑問を抱き、その真相を探り始める――。
共演者の方たちとの、長きにわたる関係
――現場の雰囲気が素晴らしいとのことですが、キャストやスタッフの皆さんともすっかりお馴染みで、和気あいあいとされていますね。
北大路 もう9作目になりますからね。衣装も皆で相談したり、ロケ地にしても「なるほどー」と感心する場所がいつも選ばれていて、行くととても感動します。
また、キャストに関しては、この作品は“利他の心”を持っている人が多くバランスがすごく取れています。
今回の一つのテーマとして、熊太と榊の男の友情、というものがあります。二人とも「誠を貫く」精神がものすごく強く、お互いを信頼し尊敬しあう深い関係性があります。これまで清左衛門と熊太は、そういう話はあまりしてこなかったので、「熊太にはこういう一面があったのか」という新しい発見があり、刺激になりました。
――長い付き合いである清左衛門と熊太の関係が、更に深まった印象を受けました。
北大路 伊東四朗さんと初めて共演したのは、「男子の本懐」(1981)というドラマでした。私は浜口雄幸という総理大臣の役で、伊東さんはいつも髪を切りにきてくれる床屋さん役でした。世間話をして髪を切りながら、総理大臣の気持ちをほぐしてくれる設定でしたが、伊東さんはそのまま私自身の気持ちも、うまくほぐしてくれました。
その後は「銭形平次」で、長い間共演しました。そういった長きにわたる関係が「三屋清左衛門残日録」でも滲みでていて、伊東さんとは自然に作品の世界に入っていけるのだと思います。
――榊甚左衛門を演じられたのは藤岡弘、さんですが、ご子息の藤岡真威人さんとは、前作の第8作「春を待つこころ」で共演されています。
北大路 藤岡弘、さんはテレビドラマ「徳川剣豪伝 それからの武蔵」(1996)で、初めて共演しました。藤岡さんは柳生十兵衛を演じて、宮本武蔵を演じる私との立ち回りがありましたが、これがものすごい迫力でした。
前作、真威人くんとの撮影現場に見にいらして、それが約30年ぶりの再会でした。本当に、お互いにとって幸せなことですよね。
そうしたら、今回は共演できるということで、いろいろなご縁がつながっている、と感慨深いですね。シリーズを長く続けてきたからこそだと思います。
――藩に資金を用立てて、開墾工事を支援する富商・能登屋を演じる上川隆也さんも、存在感がありました。
北大路 以前、上川さんにお会いした際、「いつか『三屋清左衛門残日録』に出たいです」と話してくださり、冗談かと思っていたら、今作に能登屋役で出演されることになり、とても驚きました。
役柄にしっかりと対応してくださり、作品のスケールや品格がグッと上がりました。
さらに、佐藤流司さんと山谷花純さんが演じる若い夫婦が、新しい息吹をもたせてくださいました。お二人が物語のなかで体験してきたことは、並大抵のことではないです。清左衛門はなんとか力になりたくて、精一杯やっているのですが、それでも限界がある。
その「精一杯」を、彼らは受けとってくれる。ものすごく重いテーマを抱えながらも、しっかりとお互いを思いやる気持ちがある——。心が洗われる出会いや触れ合いが生れましたね。
形ではなく、「テーマ」が大事
――2016年に第1作が放送されてからちょうど10年、三屋清左衛門を長らく演じてこられました。
北大路 清左衛門は「こんな人いるかな?」と思うくらい、素敵ですよね。清左衛門に憧れているのか、藤沢先生に憧れているのか、その作品世界に憧れているのか――いろいろなものが含まれていると思います。また、ひと様に迷惑をかけないように静かに老後を送りたい、という自分自身の希望も、そこに絡み合っています。
自分の実人生のなかだけの経験、というのは限られています。ですので、その人物像を通して、その役を演じながら、感じ取っていくことが大事なのだと思います。そのためには、感じ取れる容量を、自分自身が常に持っていなければならない――そこが自分の役目なのかな、という気がしますね。
――1956年に映画「父子鷹(おやこだか)」でデビューされ、今年で芸能生活70年という記念すべき年を迎えられます。北大路さんにとって時代劇とは何か、改めて教えていただけますでしょうか。
北大路 小さいころ、近所のおじさんに映画館に連れていってもらって、様々な時代劇を観ました。満員でスクリーンが見えないと、おじさんが肩車をしてくれました。父(市川右太衛門)の映画だけでなく、「丹下左膳」や「鞍馬天狗」などたくさん観ました。そのときのお客さんの熱気、歓声はすごかったです。
また、アメリカの西部劇にも夢中になりましたね。子どもの時は、おもちゃのピストルと刀を両腰に差して、遊んでいました。
お芝居の長い歴史を考えると、私のなかでは時代劇、現代劇、〇〇劇という区別はないんです。今生きている人間が、今を演じている。
形ではなく、「テーマ」が重要だと思います。昨年から話題になっている映画「国宝」にしても、何百年も続いている歌舞伎に挑戦する人間の喜怒哀楽、時代の流れ、そういうものに我々は感動しているのだと思います。
これからも「三屋清左衛門残日録」シリーズを、ぜひ見守って応援してほしいです。
「三屋清左衛門残日録 永遠(とわ)の絆」
時代劇専門チャンネルにて、2026年3月7日(土) よる7時ほか放送
北大路欣也
優香 松田悟志 小林綾子 佐藤流司 山谷花純
上川隆也/佐野史郎 池田鉄洋/藤岡弘、
金田明夫 麻生祐未 伊東四朗









