- 2015.11.25
- インタビュー・対談
「ない仕事」を作るには。画期的ビジネス書(?)の登場(前編)
「本の話」編集部
『「ない仕事」の作り方』 (みうらじゅん 著)
ジャンル :
#ノンフィクション
「隙間産業」が「サブカル」という体のいい言葉に
――ご自身のやられていることが、「ない仕事」だと気づいたのはいつですか?
ここ4、5年くらいですかね。デビューしてからずっといろんな雑誌で仕事をさせてもらってきましたし、雑誌を見ると載っているので、当然自分は、業界の大通りを歩いていると思い込んでやってきました。でも、どうやらそうじゃないということに、わりと昨今気がついたんです。
デビュー当時より、先輩諸氏たちから「すでに出揃ったところに行っても、お前は勝負できないから、隙間を狙え」というアドバイスを受けてきました。
僕が勝手に自分の「上司」だと思っている、糸井重里さんからは、「お前は自分で考えたことを生業として、カマボコ板にフェルトペンで『みうら』と書いた看板を出して、一人でやっていけ」と教えていただきました。どういう意味なのか、当時の僕にはさっぱりわからなかったのですが、「今、自分が一番カァ~ッと熱くなっていることを仕事にして、ダメだったら仕方ないじゃないか」という教えだったのかなと思っています。
「じゅん」という名前の漢字は、「純粋」の「純」なので、そのせいか、僕は人の話を鵜呑みにするタイプなんです。宗教の勧誘を受けて、入信するギリギリまでいったこともありましたし、消火器を買わされたこともあったし、読まない新聞を1年以上取っていたこともあります(笑)。
そうやってピュアに物事を受け取ってしまうというところが、今考えると自分にあった唯一の才能で、僕は人から簡単に影響を受けるし、簡単に自分を洗脳できてしまう。だから先輩諸氏に言われたことを貫徹しようと思って、「隙間産業」を目指したら、それが多分、今は「サブカル」という体のいい言葉で呼ばれるようになったんだと思います。
――「サブカル」は「隙間産業」だったのですね。
サブカルは、「誰もやりたくないけれど、空いているぞ」という仕事だったんです。だから、性風俗ルポでもなんでも、与えられた仕事はやってきました。代理人を立てて風俗に行ってきてもらって、話を聞いてまとめるなんて卑怯者のやり方はせず、自分でぶちあたって、病気までもらうという特攻ぶりでした(笑)。
いつの間にか「隙間産業=サブカル」が、自分の中で「メインカルチャー」じゃないかと思うようになりました。そして、雑誌で発表したり、テレビで言ったとしても、限られた人間しか見ないわけだから、自分で「営業」をかけなくちゃいけないということに、僕はデビューしてわりと早い段階から気がついていました。それがこの本で紹介している、企画も営業も接待も全部自分でやる「一人電通」という“やり口”です。
頼まれもしない原稿を先に書き、それをいろんなところに持ち込んで、断られそうになったら、その編集者を酒に誘って、酔わせて2軒目で連載をとるという「一人電通」という手法は、僕の周りでは誰もやっていませんでした(笑)。皆、腕を組んで電話の前で仕事が来るのを待っていたけれど、僕の考えることって、それまで世の中に「ない」ものだから、先方から依頼がくることもなかったわけです。
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