インタビューほか

「ない仕事」を作るには。画期的ビジネス書(?)の登場(後編)

「本の話」編集部

『「ない仕事」の作り方』 (みうらじゅん 著)

「不純な趣味」というのが、多分「ない仕事」の“核”

――少年時代は、和綴じした自家製の漫画やエッセイもたくさん作られていたそうですね。

 小学校の頃は、描くのも読むのも「自分」という、自家製の漫画本をたくさん作りました。読者のお便りページまで自分で書いていましたし、〆切に追われてとても忙しかったです(笑)。

自家製漫画本の数々

 そうやって子供の頃から、全部一人で完結していたんですが、大人になって本当の意味でデビューして、お金をもらえるようになってから、「見せ方がまずいと良くない」ということに気がつきました。

 うちに遊びに来て、エロスクラップを見て「これは違うな」とかブツブツ文句を言う奴もいて、「じゃあ自分で作れよ」と思ったりもするんですが、やっぱり一般大衆のハートを掴まないとだめなんです。

 エロスクラップも、見た人に「これはすごい」と思わせないと意味がないので、完成したら見せている友人たちの顔を思い浮かべながら貼るようにしています。だから、不純と言えば不純なんですけど、その「不純な趣味」というのが、多分「ない仕事」の“核”なんですよね。

 趣味って本来、不純であってはいけなくて、他人の目を意識せず、本当に好きなことをやらないといけないものだと思うんです。だけど僕は昔から、そこだけは「不純」の純ちゃんだったので、「人に見られてこそ」と思っていました。そのせいで、こんな人生になってしまったのかもしれません。

――結局、みうらさんの肩書きって何なのでしょうか?

 いつも頭の中に、最低でも10個くらい寝かしているネタがあるんです。例えば「とんまつり」がマイブームで、とんまな祭りばかり見に行っていたときも、それと並行して頭の中には、「せっかく交通費を使って地方に行くんだから、『いやげ物』(もらっても嬉しくない土産物)も買わなくては」とか、いくつか別のテーマを設けつつ、行動するわけです。

 そうやって、常にいくつも頭の中で引っかかるものを用意して、それが何かと結びつくのを待機する状態にしているんですが、A+B=ABにならないように、A+Bが化学変化を起こしてCになるのをずっと待っているんですよね。

 待っている間は、当然お金が入ってこないわけですから、ほかの仕事をやらないといけない。なので、肩書きとしては、「イラストレーターなど」としています。新聞社など堅いところは、「そんな職業はないので、『など』はとらせてもらいます」と言ってきますけど、今、イラストの仕事は、ほぼしていないんです。自分の文章の連載に、自分で絵も描いているだけですから(笑)。

 だから、自分の肩書きは「など」なんです。本当は、1年間で一番お金をくれた仕事が、その年の「肩書き」になるんだと思いますけどね。

――仕事に悩んでいる読者へ、メッセージをお願いします。

 今の仕事が自分に向いていないんじゃないかとか、したい仕事をしていないと思っていらっしゃる方がいるかもしれないけれど、自分も好きなものがあったのは、高校までで、それ以降は「気になる」とか「おかしい」とか無理矢理自分を洗脳してきました。

「これはおかしい」と思っているうちに、自分が「おかしい」状態になるので、そのためには、「おかしいことを好きになることはおかしい」と思い込むことが大事です。そう思い込んでやってきたので、今は若い頃に避けていたことが、すごく面白いんですよね。

「童貞のときに決めた価値判断を信じるな」ってことだと思います。童貞のときってわかっているような気がするけど、意外と喰わず嫌いなものがいっぱいあるので、そういうものを無理矢理好きになるという“どーかしてる(DS)”状態に自分を持ち込めば、それなりのグレート余生が待っているような気がするんですけどね。

みうらじゅん
1958年京都市生まれ。武蔵野美術大学在学中に漫画家デビュー。以来、漫画家、イラストレーター、エッセイスト、ミュージシャンなどとして幅広く活躍。1997年、造語「マイブーム」が新語・流行語大賞受賞語に。「ゆるキャラ」の命名者でもある。2004年度、日本映画批評家大賞功労賞受賞。興福寺「阿修羅ファンクラブ」の会長。著書に『アイデン&ティティ』、『マイ仏教』、『見仏記』シリーズ(いとうせいこうとの共著)、『人生エロエロ』『正しい保健体育 ポケット版』など。音楽、映像作品も多数ある。

 

「ない仕事」の作り方
みうらじゅん・著

定価:本体1,250円+税 発売日:2015年11月24日

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