- 2015.11.10
- インタビュー・対談
めっちゃおもろいやつがおる! 出口治明×仲野徹 歴史に残るリーダーたちの物語(前編)
「本の話」編集部
『世界史の10人』 (出口治明 著)
ジャンル :
#ノンフィクション
気候の変動と人の移動が、歴史を動かす
仲野 中央ユーラシアの歴史は面白いですね。出口さんがクビライの合理性や柔軟性をお手本にしていることはおうかがいしたことがありましたが、ほかにも中央ユーラシアの大草原にルーツを持つ、こんなに面白い人物がいたとは。
出口 僕は、歴史が大きく動く要因は二つあると思っていて、ひとつは気候の変動、もうひとつが人の移動です。それがよくわかるのが、ユーラシア大草原の歴史です。
たとえば、2世紀後半から地球は寒冷期に入って、食糧を求めて人々が南下を始めます。中央ユーラシアの大草原では、北方にいた遊牧民が少し南へ移動すると、もともとその場所にいた人たちが、玉突き移動のように、さらに南に移動する。そうやって南に下っていくと、ヒマラヤ山脈にぶつかります。
仲野 遊牧民は、馬や羊を連れているから、それらと一緒にヒマラヤを越えることができないんですね。
出口 ええ、そうです。そこで、東と西に分かれた。俗に「ゲルマン民族の大移動」と呼ばれる現象は、こうして西へ向かった人々の玉突き移動によって起きたと考えられます。東の場合は、五胡十六国時代です。匈奴(きょうど)、羯(けつ)、鮮卑(せんぴ)、氐(てい)、羌(きょう)などの遊牧民国家が、中国の華北に次々と興りました。
鉄砲が登場するまで、戦争で一番強いのは、馬に乗って矢を射る騎馬遊牧民です。ですから、中央ユーラシアの大草原にいた彼らが、気候の変動で移動することによって、ヨーロッパでも中国でも、歴史が動いてきた。
仲野 そうやって、集団で動くことで文化が融合するというのも、この本で面白かったところです。
チンギス・カアンが西方へ攻めていったとき、トルコ系のウイグル民族が建てた天山ウイグル王国の官僚を飲み込んで、モンゴルの軍事力+ウイグルの官僚組織+商才という強力タッグが生まれた。あるいは、ティムール朝、ムガール朝も、トルコ人の武力にペルシャ人の官僚組織が結びついて大帝国ができあがったとありましたね。個人でも同じことで、フレキシブルに多くのことを取り入れることができる人が、強みを発揮するんだろうなと、思いました。
出口 人間って、そんなに賢くないから、自分で思いつくことは限られている。だったら、うまくいった人のことを勉強して、自分に合うように真似したほうがいい。歴史を学ぶ意味も、そこにあるんじゃないでしょうか。
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