インタビューほか

めっちゃおもろいやつがおる! 出口治明×仲野徹 歴史に残るリーダーたちの物語(前編)

「本の話」編集部

『世界史の10人』 (出口治明 著)

出口 不思議な能力を持っている人です。風采はあがらないし、伯父のボナパルトと違って、演説も苦手だったといいます。そして、女性にだらしがなかった(笑)。二度もクーデターに失敗して監獄に入れられていますが、そこでつき添いの娘に、二人も子どもを産ませたりしています。

 しかし、治世としては悪くない。ナポレオン3世が普仏戦争で負けたことによって、フランスはアルザス・ロレーヌ地方の割譲だけでなく、50億フランもの賠償金を、統一間もないドイツ帝国に支払う羽目に陥ります。でも、予定より早く2年で完済しているのです。

 これができたのは、ナポレオン3世がクレディ・モビリエ銀行という、かつての日本興業銀行のような産業金融を行う銀行をつくり、鉄道に投資して国内の基盤を整え、アフリカに植民地を設け、さらに自由貿易でフランスの国力を高めていたからです。

ナポレオン3世

仲野 そのインフラがあったからこそ、ナポレオン3世亡き後の共和国の人びとが、公債を大量に引き受けて、多額の賠償金を短期間で支払うことができたんですね。

 興味深かったのは、ナポレオン3世が唱えた皇帝民主主義です。これって、かなり自分に都合のいい発想ではありませんか?

出口 皇帝+民主主義ですから、明らかに矛盾しています。ただし、ナポレオン3世は、この考えを真面目に信じていたようです。第一、皇帝になった時も、大統領制を定めた憲法の下、皇帝制を導入するかどうか、国民投票にはかっているのです。さらに、労働者の団結権・ストライキ権、出版・集会の自由を認めて、当時の為政者たちからは驚きをもってみられています。最終的には、議員内閣制を認めた憲法までつくっていますから、すごくユニークだったことは確かでしょう。

仲野 ナポレオン3世の章の最後に、出口さんが、「何よりも、今に残るあの美しいパリの町を造った、その一点だけでもナポレオン3世を評価していい」と、捨て台詞みたいに感想を記しておられるのが、またよくて(笑)。

出口 結果的に、フランスが観光客で潤っているのはパリがあるからですよ。ナポレオン3世がパリの町を大改造するまでは、生ゴミや汚物が散乱し、もっと昔はそれらを掃除する目的で豚が放し飼いにされていたといいます。それを、金融界に顔の効くジョルジュ・オスマンを登用して道路を整備し、衛生面も向上させた。長い目でみたら、やはりナポレオン3世は、いいことをしているんじゃないかと思います。

仲野 フランスの近代化の基礎づくりをしたといえますね。女性にめっぽう弱い、皇帝なのに最後は捕虜になってしまう、そんなところも含めて、彼の人生はおもろすぎます。『世界史の10人』で読者の人気投票をしたら、きっとナポレオン3世が1位になると思いますよ(笑)。


「めっちゃおもろいやつがおる! 出口治明×仲野徹 歴史に残るリーダーたちの物語(後編)」へ続く

仲野徹(なかの・とおる)
大阪大学医学系研究科・生命機能研究科教授。1957年大阪市生まれ。1981年大阪大学医学部卒業、内科医としての勤務、大阪大学医学部助手、ヨーロッパ分子生物学研究所研究員、京都大学医学部講師、大阪大学微生物病研究所教授を経て現職。専攻は、エピジェネ ティクス、幹細胞学。
著書に『カラーイラストでよくわかる 幹細胞とクローン―全能性のしくみから再生医学まで』(羊土社、2002)、『なかのとおるの生命科学者の伝記を読む』(学研メディカル秀潤社、2011)、『エピジェネティクス』(岩波新書)などがある。


出口治明(でぐち・はるあき)
ライフネット生命保険株式会社代表取締役会長兼CEO。1948年、三重県生まれ。京都大学法学部卒業後、 72年、日本生命保険相互会社に入社。企画部、財務企画部、ロンドン現地法人社長、国際業務部長などを経て退職。2006年、ネットライフ企画株式会社 (2年後、現社名に変更)を設立、代表取締役社長に就任。13年より現職。
著書に『生命保険入門 新版』(岩波書店)、『生命保険とのつき合い方』(岩波新書)、『仕事に効く教養としての
世界史』(祥伝社)、『「働き方」の教科書』(新潮社)、『人生を面白くする本物の教養』(幻冬舎新書)などがある。

世界史の10人
出口治明・著

定価:本体1,400円+税 発売日:2015年10月31日

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