- 2015.11.10
- インタビュー・対談
めっちゃおもろいやつがおる! 出口治明×仲野徹 歴史に残るリーダーたちの物語(前編)
「本の話」編集部
『世界史の10人』 (出口治明 著)
ジャンル :
#ノンフィクション
ナポレオン3世がおもろすぎる!
仲野 登場する10人をみていて思ったのは、出口さんは、苦労人がお好きなのかな、と(笑)。だいたいみんな、若い頃に苦労をしていませんか?
バーブルは若い頃、実のお姉さんを人質に差し出して、サマルカンドから脱出しているし、王安石は科挙で四位という優秀な成績をおさめたのに、自ら志願して地方役人からスタートしている。エリザベス1世だって、実のお母さんが反逆罪で斬首されて、自分も腹違いのお姉さん、メアリー1世に殺される可能性があった。
出口 いやいや、個人的には、苦労するよりもラクをしている人のほうがいいと思いますよ(笑)。ただ、お天気の日があれば雨の日もあるように、人生も山あり谷ありで、波瀾万丈の人生をおくった人のほうが、面白いということはありますね。
仲野 僕はいつも学生たちにこう言って、他の先生方からいやがられるんです。「苦労は人をダメにする」って(笑)。
若い頃に苦労したほうがいいとよく言われますが、苦労を克服して成功した人だけが評価されているから苦労が大事だということになってる。でも、ほとんどの人は、苦労に耐えられなくてダメになるんです。だから、できれば苦労はしないほうがいい(笑)。
出口 ええ、まったく同感です。
仲野 その点で気に入ったのは、ナポレオン3世です。あのナポレオン・ボナパルトの甥にあたりますが、ボナパルトの失脚に伴って、子どもの頃は亡命生活を送っている。でも、母親のオルタンスの財産のおかげで、それほど悲惨な生活ではなかったみたいですね。つまり、苦労しているようで、していない(笑)。
高校時代の世界史の授業では、ナポレオン3世は、晩年に普仏戦争に負けて、フランスはアルザス・ロレーヌ地方をドイツに割譲させられるなど、ダメ君主の代表のように習いましたが、出口さんの書かれたナポレオン3世は、なかなかいいことをやっている。民衆からの人気があったんでしょうね。
出口 人気があったかどうか本当のところはわかりませんが、大統領選挙で勝ったのは、おそらく「ナポレオン」という名前があったからでしょうね。
仲野 最初は泡沫候補だったのが、浮動票が流れたんですね。
出口 何しろ、フランスに「ナポレオン」という名を知らない人はいませんから。加えて、ミス・ハワードというロンドンの高級コールガールからの選挙資金が大きくモノをいいました。
仲野 そう、何か困ったことが起こると、愛人のミス・ハワードが助けてくれるのが、素晴らしすぎます。父親から受け継いだ莫大な財産を遊蕩で使い果たしたときも、ミス・ハワードが援助していますね。そして、最期も彼女が用意してくれたロンドンのお屋敷で息をひきとっている。このあたり、最高に気に入りました。
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