本業に専念するか、事業拡大か
――東京スパイラルは、社長の瀬名洋介と同世代の仲間が立ち上げた会社ですが、成長の過程で本業に専念するか、事業拡大かで大きな決断を迫られます。経営者としてどう読みましたか?
これは、会社を経営していると必ずぶち当たる壁です。選択と集中をしていくのか、多角化をするのか。二者択一かのように語られることがありますが、必ずしも二者択一ではないかなと思っているんです。
もちろん得意な分野は本業として伸ばして行きつつ、そこから関連する事業についてはきちんと手を伸ばして新しい事業を作り、お客様を開拓していく。そういうバランス感覚でいればいいと思います。
ただ闇雲に「儲かればいい」「最近流行ってそうだ」ということでは本当の嗅覚はきかないでしょうし、やる意味がない。お客様がいるのかも分らないでしょう。今、自分たちがやっている事業から感じ取っているバリューを、どう転換したらお客様に届けられるのか、という視点が大事です。
たとえばSNSの「mixi」、ゲームの「モンスターストライク」。これって全然違う事業のように思えるかも知れないですが、私たちは、かなり共通点があると思っています。
SNSのmixiは仲の良い友達と日記を交換して楽しむサービス。モンスターストライクはゲームではあるんですが、大好きな友達や家族と集まってワイワイガヤガヤと楽しむエンタテインメントと位置づけているんですね。事業の切り方によっては全然違うビジネスに見えるんですが、実はかなり似通っていると位置づけています。
こういうふうに得意とする領域、お客様をきちんととらえてやっていくことで両立ができるのかなと思います。
『ロスジェネの逆襲』では、他の役員がベンチャー企業に投資してキャピタルゲインを稼ぐ計画を提案し、瀬名社長が「成長率が鈍化したからといって、狼狽して不慣れな新事業にカネを突っ込んでどうする。もっと冷静に対応してくれないか」と拒絶していましたね。
―― どんな人に『ロスジェネの逆襲』を薦めたいですか?
まずは、本をあまり読まない人には読んでみてもらいたいですね。半沢直樹シリーズは、「テレビでやってたあの話のシリーズなのか」と興味を持ってもらいやすいと思います。
とにかくエンタテインメントとしての作りがすごく面白いです。自然に事件に巻き込まれて、そのなかでいろんな窮地に立たされるわけですね。それを半沢直樹の視点で、あるいは東京スパイラルの社長の視点でとか、いろんな視点で味わっていく。すごくドキドキ、ハラハラしますね。
こんな問題を解決できるのか、絶対無理だろうというところで、ものすごいアイデアで切り抜けて行く。エンタテインメントとしての面白さは間違いがないので、最近本はあまり読まない、ビジネス書は仕方がないけど小説はなあ、という方も多いと思うんですけど、ぜひ手にとっていただいて、小説ならではのドキドキ、ハラハラを味わって欲しいと思います。
木村弘毅(株式会社ミクシィ 取締役 「XFLAG」スタジオ 総監督)1975年生まれ。電気設備会社で勤務後、携帯コンテンツ会社などを経て2008年よりミクシィにてゲーム事業に従事。15年より現職。
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