「おれ、部活やりたい」引っ込み思案、だけど一人称が「おれ」の女の子が吹奏楽部に入部して始まる、音楽と友情の疾風怒濤――。『屋上のウインドノーツ』で第22回松本清張賞を、同時に『ヒトリコ』で第16回小学館文庫小説賞を受賞して大注目の額賀澪さんにお話を伺います。
――このたびは松本清張賞受賞、おめでとうございます。『屋上のウインドノーツ』(以下『ウインドノーツ』)とともに小学館文庫小説賞を受賞した『ヒトリコ』も同時刊行されるという「W受賞デビュー」となりましたね。
額賀 ありがとうございます。
――「ウインドノーツ」と「ヒトリコ」は、たとえば友情の描かれかたなどがとても対照的な作品だと思いますが、この二つの作品は同時に執筆していたものなのですか。
額賀 賞に応募した時期の前後はありますが、ほぼ同時期に書いたものです。どちらの作品も原形は大学(日大芸術学部)時代に書き始めたもので、そこから書き足したり改訂したりする作業を、賞に応募するまで続けました。
――「ウインドノーツ」はタイトルどおり吹奏楽が物語の重要なモチーフとなっています。この題材を選んだ理由は?
額賀 私は中学の三年間、かなり一生懸命に吹奏楽と合唱をやっていて、その時のことが未だに自分の中にこびりついているんです。大学には小説の創作を学ぶために入ったのですが、音楽を書くことはそれ以前から意識していました。その後に大学の小説創作のゼミの先生から「自分のルーツを書け」と言われたことがあって、私のルーツといったら音楽、具体的には吹奏楽と合唱なので、迷わず作品の題材に選びました。「合唱」は「ヒトリコ」のモチーフになっています。
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