- 2016.10.18
- 書評
タイムトラベル・ロマンスの歴史に残る名作
文:大森 望 (文芸評論家)
『11/22/63』 (スティーヴン・キング 著/白石朗 訳)
出典 : #文春文庫
ジャンル :
#エンタメ・ミステリ
さて、最後に、本書誕生のいきさつについて。NPR(ナショナル・パブリック・ラジオ)の著者インタビューでキングが語ったところによると、最初にこの小説の着想を得たのは、メイン州のハイスクールで教師をしていた一九七一年のことだったという。JFK暗殺からちょうど八年後の同年十一月二十二日、学校の教職員ラウンジで、だれかが「もしケネディが暗殺されてなかったら、世界はどうなっていただろうな」と言うのを耳にしたのがきっかけだった。キングいわく、「11/22/63は、僕らベビーブーマー世代にとっての9/11なんだよ」
この時点ですでに、すごい小説になると確信していたが、当時はまだ、そんな大きなテーマに挑むだけの力がなかったし、暗殺事件から日が浅くて題材が生々しすぎるということもあって、書くのを見送ったらしい。それから四十年の歳月を経て、綿密なリサーチのもと、本書が誕生したわけだ。「待つことにしてよかったよ」とキングは語っている。
なお、本作は、二〇一六年に、バッド・ロボットとワーナー・ブラザーズ・テレヴィジョンの制作でTVドラマ化されている(全九話)。製作総指揮のJ・J・エイブラムズは、ドラマでは『エイリアス』や『LOST』、映画では『スター・トレック イントゥ・ダークネス』『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』の監督として知られる当代一のヒットメーカー。キングみずからJJに電話して、『11/22/ 63 』の映像化に興味はないかと打診したことから、ドラマ化が実現したのだとか。
ジェイク役はジェイムズ・フランコ(第五話の監督も担当)、アル役はクリス・クーパー、ヒロインのセイディー役は新鋭のサラ・ガドン、リー・ハーヴェイ・オズワルド役はダニエル・ウェバー、イエロー・カード・マン役はケヴィン・J・オコナーが、それぞれ演じている。兎穴を抜けた先が一九五八年ではなく、一九六〇年十月二十一日に設定されるなど、原作から変更されている部分もあるが、評判はおおむね上々。とりわけ、完璧に再現したという一九六〇年代のアメリカが見もの。最初の二話だけで一七〇〇人のエキストラが当時の衣裳で登場。さらに当時の年式の車を二〇〇〇台も集めたとか。キング自身も、「小説のページから抜け出したような光景だ」とその再現性に太鼓判を捺している。
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