『シャイニング』で忘れがたい印象を読者に残した“かがやき”をもつ少年ダニー・トランスの成人後を描いたこの作品は、アメリカ・ホラー作家協会が選定する二〇一三年度のブラム・ストーカー賞の最優秀長篇賞を受賞しました。さらに翌二〇一四年、キングは“初のハードボイルド/捜査小説”として大きな話題を呼び、三部作の第一作でもある『ミスター・メルセデス』Mr. Mercedesと、宗教をテーマにして久しぶりに真正面から超自然ホラーに取り組んだ『リバイバル』Revivalの二作をたてつづけに刊行、『アンダー・ザ・ドーム』(文春文庫)と『11/22/63』(文藝春秋)という大作で大きな話題を呼んだのちもなお、ますますの健在ぶりを全世界に示しました。二〇一三年にペーパーバック・オリジナルで刊行された『ジョイランド』Joylandとならんで、この三作も文藝春秋より邦訳刊行が予定されていることをつけくわえておきます。
なお本書には、前記のキング自身の作品をふくめて多くの作家の作品が引用されています。既訳のあるものは大いに参考にさせていただきましたが、いずれも文脈にあわせて訳しなおしたことをお断わりしておきます。
最後に蛇足を。本書のあるシーンで、リーシーが有名な小咄(こばなし)の落ちの文句“だけ”を思い出します。どのような小咄なのかを知りたい方のために、ここで紹介しておきます。
ある冷えこんだ夜、ひとりの男が売春宿に血相を変えて飛びこんできた。いますぐ“こと”に及ばなくては耐えられない、とただならぬ剣幕。娼婦はいるが、あいにく満室だと女将(おかみ)が告げると、男は屋根の上だってかまわないといい、娼婦とともに屋根の上でくんずほぐれつ……ところが、勢いあまって屋根から転がり落ち、ふたりとも気をうしなうというお粗末。そこに通りかかったひとりの酔っぱらい、すっぱだかで路地に転がっているふたりを見てびっくり仰天、売春宿に飛びこんで女将にいった科白が――――。
(本稿は、二〇〇八年刊行の単行本版「訳者あとがき」に加筆・訂正をほどこしたものであることをお断わりしておきます)
-
名作がいっぱい 文春文庫の海外ミステリを振り返る
-
危機感からの創刊、そして読者層の拡大へ 座談会(2)
2014.04.09インタビュー・対談 -
『アンダー・ザ・ドーム』解説
2013.11.22書評 -
スティーヴン・キング 恐怖の帝王、ケネディ暗殺を描く
2013.10.08インタビュー・対談 -
単なる善悪の闘争を超えて
2011.04.20書評
-
『皇后は闘うことにした』林真理子・著
ただいまこちらの本をプレゼントしております。奮ってご応募ください。
応募期間 2024/11/29~2024/12/06 賞品 『皇后は闘うことにした』林真理子・著 5名様 ※プレゼントの応募には、本の話メールマガジンの登録が必要です。