わたしの好み――ここだけの話
今回、全国で84軒のごちそうを紹介したが、友人が「おまえの好みを正直にのべよ」と追いつめてくるので、それでは内密にということで書いてしまおう。
カメラマンとしては、やはり肉ものは写真にして迫力があるから張り切ってしまうし、私の胃も同じ考えのようである。いちばんのお気に入りといえば「元祖豚丼のぱんちょう」の「梅」である。メニューに松、竹、梅とある場合、松が高級、梅が安価なのが一般的だが、この店の初代夫人の名が梅さんゆえに、いちばん高級なのは「梅」なのだ。肉の量はもちろん、お気に入りの味で、元気がないときや心が萎えたら、飛んで行って丼をかきこみたくなる逸品である。
つづいて会津若松の「白孔雀食堂」のソースカツ丼。25年前に食べたことがあったので、蓋つき丼の蓋からはみ出た部分に、まずは互いに元気であって良かったと挨拶して食べ始めた。最近はより肉量が多い店が出てきているが、私にはこの店の厚さと量が合う。細く切ったキャベツに、会津米のご飯と一緒に食べられる良さがある。
京都でオムライスは、意外かもしれない。粋な町にはどこでも洋食屋のいい店があるが、京都ではとくにすばらしい店が多いのだ。オムライスはどこにでもあって、手間と時間をかけて作っている。くるんだ玉子にかけるソースにさまざまな工夫があるのだが、「グリル冨士屋」では何もかけない! ライスに入る牛肉の質にこだわり、さらに玉子を味わって欲しいと焼き上げる時間にこだわるのみ。何もしない大切さを私はおそわった。
栃木市の「こうしんの店」のじゃがいも入り焼きそばも時々食べたくなる。コロコロした芋がたくさん入って、さっぱり味で380円なり。寒くなると福岡の「かろのうろん」のごぼう天うろん、もっと寒くなると芦別の「きんたろう」のがたたんスープが恋しくなる。
まだまだあるにちがいない
あなたの町にもきっとソウルフードがある。勝手だがメディアがこないうちにこっそり教えて下さい。
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