
――ご自身がるいを演じるうえで意識されていることはありますか。
高島 平岩先生の作品は、『水鳥の関』(NHK金曜時代劇「お美也」2002年放送)、その後に『御宿かわせみ』と続けてやらせていただきましたが、実際にファンとして読んでいた「かわせみ」にキャスティングしていただいて、演じる側に回ったときには、ずいぶん緊張しましたね。でも、平岩先生の作品には、どこか背筋が伸びるような心地よさがあるんです。それは、他の出演者やスタッフの方も同じだと思うんです。むしろ、みんなでその緊張感を楽しみたいですね。私は、石井(ふく子)先生の作品でも、お仕事させていただいています。石井先生は、平岩先生とたくさんお仕事されているので、今度の舞台化の話をしましたら、「あなただから、ちゃんとできると思うけどね、平岩先生の作品をやるんだったらね、ちゃんと平岩先生のアドバイスを聞いておけば大丈夫だから」と言われ、さらなるプレッシャーが……(笑)。
あと、テレビのときには、東吾に「もう、馬鹿ばっかし」と言う決めゼリフがあったんですが、東吾といるときは、凛とした宿屋の女将であると同時に、東吾を諦めきれない恋する女。東吾さんの前ではガンコだったり、気の強いところもあるけど、お客様へはこまやかな思いやりがあって、いろいろとわきまえた、さりげない優しさがある。相反する要素を1人の女性として演じることが難しかったですね。その点、橋之助さんは、八丁堀の人のきりっとしたところと、自由な次男坊というのを見事に演じて、ご自身の東吾を作られていたと思いましたね。今回、舞台でも、わたしはそういう「かわいいるい」をどう“体で表現できるか”を大切に演じたいと思います。お芝居ですから、他の方と息をあわせることも大事ですが、脚本がとてもテンポがよいので、会話が続いていくときにも、流されないようにあえて、るいらしく凛としつづけるというのも、気を付けられれば。あとドラマの「かわせみ」では、たいがい正座のシーンで、それが大変でした。今回どうなるのか少し不安です(笑)。
――最後に、今回の舞台の見どころを教えてください。
高島 もちろんわたしのように、原作が好きで見に来られる方もたくさんいらっしゃると思うのですが、今回、G2さんの演出で、『御宿かわせみ』を知らなかった新しい方にも、この公演を見ることで、舞台や時代劇を身近に思っていただければ。『御宿かわせみ』は、いわゆるベタベタの時代劇ではなくて、江戸末期の激動の時代背景だったり、古き良き時代の人情と風情を生かした江戸情緒、そして様々な人の人生模様を同時進行で構成する「グランド・ホテル」形式というミステリー的要素のある捕物帳と、たくさん魅力的な要素があります。それをG2さんが演出される。実は私が初めて見た舞台も、G2プロデュースの『12人の入りたい奴ら』でしたが、そのテンポの良い舞台を見たのが「舞台って面白いな」と思ったきっかけでした。だから、初めて時代劇を見る人や「かわせみ」を読んだことがない人でもどこか今回の舞台では心をひきつけるものがあるに違いないと思っています。テレビとは違って、舞台はライブですから、観客の方の反応が見えますし、カットがかからないですから、舞台の上のどこを見ていただいてもいいんです。感情移入できる役だって、自由に選んでいただける。それが舞台の魅力です。ですから、しっとりと演じたNHKのドラマの雰囲気を生かしつつ、舞台での違いも出せれば。お客さんとのライブ感を大切に、若い役者さんとも意見交換をしながら、「かわせみ」の世界を知っている橋之助さんとわたしで、うまくはみ出さないようにできれば、ぜったいに良い舞台になるんじゃないでしょうか。
舞台「御宿かわせみ」は、東京・明治座で5月3日から27日まで。
写真◎加藤孝
合本 御宿かわせみ(一)~(三十四)
発売日:2014年11月21日
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