料理研究家の草分けである辰巳浜子さんが著し、昭和の家庭で読み継がれてきた料理書に、娘である辰巳芳子さんが注釈をつけた新版の新書判が登場しました。お正月の中心的な食材であるお餅の扱い方を、あらためて学びませんか。
お餅の保存法
切り餅にかびが出たらナイフや包丁できつくこそがずに、水につけてみて下さい。三十分もつけるとかびはふきんで拭くだけでするりと取れます。
お正月用の餅を、一度に沢山つく必要のなくなったこのごろです。食べたい時必要なだけついたり、買える時代になりました。
一昔前まではお餅つきは大仕事だったので一度に沢山つく慣わしでした。カビを防ぐために酒の霧をかけるとか、固くなると大いそぎで水餅にしたものです。今ではポリ袋に入れて、冷蔵庫に入れれば、かなりの期間をやわらかく保存できますけれど、お正月は冷蔵庫も満員で、お餅など入れる余地はないでしょう。
これを考えると、おいしいお餅を食べるためにも、又保存の点からも、出来れば年内にはお祝儀用に間に合うだけにし、年が明けて寒に入ってから、寒餅をつけばよいわけです。
完全な保存法としては、むしろ貯蔵の目的で、最初からあられ、又はかき餅として寒の間に乾すことだと思います。
鏡餅は前頁のように堅餅にした揚げ餅が誰にでもよろこばれます。
お鏡びらきがすんだら、寒風に直接あてると、だんだんと表面がひび割れます。割れた部分は、はがしては割り、割ってははがすと、どんなに大きくても一カ月位で芯まで乾し上がります。こうして乾したものは、一年でも二年でも保存できます。
乾した餅は、一昼夜水につけてからひき上げ、蒸してすりこぎでこねると、つきたてのお餅に戻ります。
*水餅 戦前は冷蔵庫が普及していなかったので、大量についた餅にカビが生えぬよう水に浸けておいた。
*寒餅 正月が終わり、大寒の頃につく餅のこと。
寒の風というのはあらゆる乾物の手入れに適しており、大寒から立春までのあいだにかんぴょうや椎茸、煮干などを干しておくと持ちがよくなる。また、魚の干物なども二~三日寒の風にさらすと風味が増す。(辰巳芳子)
イラスト◎前田典子
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