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お餅――家庭料理の名著がつたえること【第4回】

『新版 娘につたえる私の味 一月~五月』 (辰巳浜子・辰巳芳子 著)

料理研究家の草分けである辰巳浜子さんが著し、昭和の家庭で読み継がれてきた料理書に、娘である辰巳芳子さんが注釈をつけた新版の新書判が登場しました。お正月の中心的な食材であるお餅の扱い方を、あらためて学びませんか。

揚げ餅

『新版 娘につたえる私の味 一月~五月』 (辰巳浜子・辰巳芳子 著)

切り餅は四、五日たつとまわりが少し固くなってきます。これをたっぷりの油で揚げてごらん下さい。生餅の大きいのが揚がるのかと皆さん心配なさいますが、油の中でくるくると上下に返しながら揚げると、外側はカリッとし、中がふんわりとやわらかく、何ともいえない美味しいものです。

ただ塩を少々かけただけでもよいのですが、大根おろしをからめたり、わさび醤油をつけたりします。私は揚げたてに醤油をつけ、海苔で巻いたのが一番おいしいように思います。味噌汁に入れてふり葱に七味でいただくのも又、寒い日にはよろこばれます。

焼くよりも揚げた方が一度に沢山出来て、手間もはぶけて便利のようです。その上油を使うので、現代の子供むきともいえましょう。

ふり葱 ふり葱とは、さらし葱のこと。それを汁にふり入れることをいう。さらし葱のつくり方は見よう見まねの世界であるが、この常識の世界が欠落してしまった。手のつけようがない。(辰巳芳子)

揚げかき餅

お鏡餅を乾かして小さくたたき割り、からからにして缶に入れて保存しておきます。

大きい鍋に油をたっぷり入れ、一センチ角位の堅干の餅を、沢山次々に入れます。

ふくらんでくると、鍋一杯になります。火はゆるくして(一四〇度位)油の中で揚げるというより油煮といった心持で、たえず鍋の中の温度を平均させるためにかきまぜ、お餅の一つ一つがひびわれてふくれ、うすい狐色になるのを頃合とします。揚げたての熱いうちに紙の上にとりあげて、塩をふりかけ、充分に油をきります。

イラスト◎前田典子

辰巳浜子(たつみはまこ)

料理研究家。1904(明治37)年、東京生まれ。香蘭女学校卒業。著書に『手しおにかけた私の料理』(婦人之友社)、『料理歳時記』(中公文庫)などがある。1977(昭和52)年逝去。享年73。


辰巳芳子(たつみよしこ)

料理研究家。1924年(大正13)年、東京生まれ。聖心女子学院卒業。父の介護を通じてスープ作りに開眼。鎌倉の自宅で「スープの会」を主宰する。主な著書に『あなたのために』(文化出版局)、『辰巳芳子 スープの手ほどき 和の部』『同 洋の部』(ともに文春新書)、『食といのち』(文藝春秋、文春文庫)など。

新版 娘につたえる私の味 一月~五月
辰巳浜子、辰巳芳子・著

定価:本体1,000円+税 発売日:2015年10月20日

詳しい内容はこちら

新版 娘につたえる私の味 六月~十二月
辰巳浜子、辰巳芳子・著

定価:本体1,000円+税 発売日:2015年11月20日

詳しい内容はこちら



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