『天地に燦たり』作品紹介
一五八六年、関白秀吉の覇は全国に及びつつあり、九州征伐では島津家も秀吉に降ろうとしていた。島津家の侍大将、大野七郎久高は、天地ト参ナルベシ(人は、天地と三つに並び合う存在となる)という、人の可能性を信じる儒学の考え方に憧れていたが、争いの絶えない世の中に失望していた。同じころ、朝鮮国の被差別身分・白丁の少年、明鍾は、儒者の道学先生に出会い、儒学を学び始める。
秀吉の征服欲はとどまらず大明国の征服を企図し、周辺国に服属を要求する。琉球国の密偵、真市は、秀吉と日本の圧力に悩む母国を憂う。そして日本の情報を得るため、商人を装い久高に近づく。
一五九〇年、島津家は豊臣秀吉の北条家征伐に、当主後継の島津久保を参陣させる。護衛として同行した久高は、戦のない新しい国作りを目指す久保のために働くと誓う。
一五九二年、日本軍は朝鮮国に攻め入る。明鍾は戦乱に乗じて戸籍簿を焼き、身分を偽り仕官する。 日本軍は朝鮮国を追い詰めるが、反攻に遭って後退、碧蹄の地で大明・朝鮮軍と決戦になる。決戦に参加した久高は、道学先生を撃ち殺す。久保は朝鮮国の風土に慣れず病死し、久高は生きがいを失う。大明国・朝鮮国と日本の和平交渉は破綻し、再び戦が始まる。
明鍾は、島津が相手の泗川の戦に従軍する。敗れた明鍾は戦場で、師の仇の久高を見つけ殴りかかり、捕えられる。分かりあえない久高と明鍾の様子を見ていた真市は、明鍾を琉球国に連れ出すのだった。
豊臣秀吉の東アジア侵攻を縦軸、儒学の思想を横軸に、侵略する立場とされる立場の三人の男を描く。本当の人とは何か、という問いに、彼らがたどり着いた答えとは━━。
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