![僕とミステリ書店〈TRICK+TRAP〉と女探偵・葉村晶の不思議な関係](https://b-bunshun.ismcdn.jp/mwimgs/6/c/480h/img_6cdeb21c2089b4f013ffe712769476ae1221423.jpg)
- 2018.08.20
- 書評
僕とミステリ書店〈TRICK+TRAP〉と女探偵・葉村晶の不思議な関係
文:戸川安宣 (編集者)
『錆びた滑車』(若竹七海 著)
出典 : #文春文庫
ジャンル :
#エンタメ・ミステリ
かなり複雑な物語ですが、注意して読むと縦横に伏線が敷かれていることに気づかれることでしょう。どうか、存分にお楽しみください。
──で、終わっても良いのだけれど、それではあんまり愛想がないので、〈MURDER BEAR BOOKSHOP〉のモデルになった、という書店のことを書いてみたいと思います。
そのお店とはかつて吉祥寺にあった〈TRICK+TRAP〉というミステリ専門書店なのですが、そこでぼくは葉村晶のように、店長に代わって店番をしていたのです。
〈TRICK+TRAP〉は二〇〇三年の三月、料理研究家・小林カツ代さんの娘・まりこさんが開いたお店で、ぼくはひょんなことで、その翌年の秋ごろから、初めは葉村晶のように週末だけ店番をするようになりました。オーナー兼店長が最初のおめでたを翌春に控えて、毎日店頭に立つのが大儀そうだったからです。年が明けると、オーナーは出産を控えて産休に入り、やむなくぼくはウィークデイも極力店に出るようになりました。
〈TRICK+TRAP〉は吉祥寺駅の北側を中央線の線路とほぼ並行に走る一方通行の道に面した三階建てのワンルームマンション、その二階のひと部屋を借りて営業していました。深紅のカーテンで飾られた室内は、窓一つを除いて書棚で埋め尽くされていました。そしてこれはオーナーの素敵なセンスで、天井に装飾ドアが取り付けられていて、あたかも異世界に通じるような幻想的な雰囲気を漂わせていたのです。
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