書評

僕とミステリ書店〈TRICK+TRAP〉と女探偵・葉村晶の不思議な関係

文: 戸川安宣 (編集者)

『錆びた滑車』(若竹七海 著)

『錆びた滑車』(若竹七海 著)

 そして新年早々、二月で閉店する旨を告知しました。

『暗い越流』(光文社文庫)のあとがきによると、「オリジナル短編を私家版で出し、この店に置くことになっていた。で、吉祥寺のミステリ専門書店を舞台にした短編を書き、夫とふたりでキンコースにコピーを取りに行って、夜なべして折って、表紙をつけてホチキスで製本する、という地道な作業で五十部を作り上げ、〈TRICK+TRAP〉で売りさばいた」とあります。

 実際は、二〇〇七年の二月十日発行の「信じたければ〜殺人熊書店の事件簿1〜」というこの小冊子は、事前告知が功を奏して、一日で完売してしまいました。ぼくの手帳によると、十一日の日曜、若竹さんがご夫君と冊子を持って来てくださったのです。

 そして翌十二日月曜──振替休日のこの日、〈TRICK+TRAP〉は最後の営業をして、わずか四年の歴史を閉じたのです。

 ところで、若竹さんと〈TRICK+TRAP〉の物語にはまだ続きがありました。

 それから十年後の二〇一七年二月二十五日土曜日、高円寺にある喫茶店レヴンで、〈TRICK+TRAP〉のお客さん二十名ほどが集まって茶話会を開いたのです。若竹さん夫妻をお招きし、ミステリの話をしよう、ということになりました。


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錆びた滑車若竹七海

定価:本体800円+税発売日:2018年08月03日