- 2018.08.20
- 書評
僕とミステリ書店〈TRICK+TRAP〉と女探偵・葉村晶の不思議な関係
文:戸川安宣 (編集者)
『錆びた滑車』(若竹七海 著)
出典 : #文春文庫
ジャンル :
#エンタメ・ミステリ
しかも、お話ししたように〈TRICK+TRAP〉に通うのに吉祥寺にはしょっちゅう行っておりましたし、実を言うと三十歳前後の数年間、〈TRICK+TRAP〉のちょっと先に住んでいたこともあるので、武蔵野、三鷹、杉並、練馬といった辺りはまさによく歩いたエリアだったのです。ですから、三鷹台の駅から立教女学院の前を通って……とか、下連雀六丁目からむらさき橋通りを北上し……などという描写を読むとわくわくしてくるのです。
そういえば、本書の中に池袋の〈インコ〉という喫茶店が出てきます。ここは学生時代、妙齢の美少女だった若竹さんに「女子大生はチャターボックス」というしゃべくり書評をお願いしていた時、若竹さんが採り上げる本を広げてお仲間と座談を繰り広げた想い出の店なのですが、先日たまたまその前を通りましたら、永い間ご愛顧戴きましたが、この度一月三十一日をもって閉店いたしました、という張り紙がしてあって、丸三十六年の歴史に幕が引かれていたのです。そんな発見も、歩いていたからこそ目にすることができたわけです。
さあ、今度、葉村はどこを歩くのかしら、というのが本シリーズを読む、もう一つの愉しみでもあるのです。
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