- 2018.08.20
- 書評
僕とミステリ書店〈TRICK+TRAP〉と女探偵・葉村晶の不思議な関係
文:戸川安宣 (編集者)
『錆びた滑車』(若竹七海 著)
出典 : #文春文庫
ジャンル :
#エンタメ・ミステリ
ただし、店名を記した鉄のドアはいつも閉ざされていて、入るのに些(いささ)か勇気が必要でした。通りに面した窓にはシャーロック・ホームズのシルエットと店名を描いた看板が掲げられていたのですが、目線をかなり上げないと、それは目に入らなかったのです。
店番を始めてみると、週末ということもあってそれなりのお客さんがあったのですが、これが平日となると、来店者は二、三人、という日も少なくありませんでした。
これはまず、お店の存在を認知してもらわなくては、と思い、オーナーが作ったホームページにブログを書くようにいたしました。知り合いの作家の方を呼んでサイン本を作ってもらい、ブログに誰々さんのサイン本あります、と告知を載せてみたのです。
すると効果覿面(てきめん)。いつもの倍のお客さんがいらっしゃるようになりました。それなら思い切ってサイン会をしてみようか、というので親しい作家さんにお願いし、ホームページにその旨告知を出すと、大勢のファンの方が来店してくださいました。といった具合で、店の売り上げも徐々に上向いてきたのですが……。好事魔多し。ぶじ出産を終え、しばらくして復帰してきたオーナーに二人目のお子さんが宿り、二〇〇六年の秋には、今度はぼくが不注意で自宅の塀から落ち、翌年初めにかけて三度も入院手術を受ける仕儀になり……といった具合で、二〇〇七年二月に迎えるマンション契約の更新時に、オーナーと相談をして店を閉めることにしたのです。
-
『赤毛のアン論』松本侑子・著
ただいまこちらの本をプレゼントしております。奮ってご応募ください。
応募期間 2024/11/20~2024/11/28 賞品 『赤毛のアン論』松本侑子・著 5名様 ※プレゼントの応募には、本の話メールマガジンの登録が必要です。