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僕とミステリ書店〈TRICK+TRAP〉と女探偵・葉村晶の不思議な関係

僕とミステリ書店〈TRICK+TRAP〉と女探偵・葉村晶の不思議な関係

文:戸川安宣 (編集者)

『錆びた滑車』(若竹七海 著)

出典 : #文春文庫
ジャンル : #エンタメ・ミステリ

『錆びた滑車』(若竹七海 著)

 ただし、店名を記した鉄のドアはいつも閉ざされていて、入るのに些(いささ)か勇気が必要でした。通りに面した窓にはシャーロック・ホームズのシルエットと店名を描いた看板が掲げられていたのですが、目線をかなり上げないと、それは目に入らなかったのです。

 店番を始めてみると、週末ということもあってそれなりのお客さんがあったのですが、これが平日となると、来店者は二、三人、という日も少なくありませんでした。

 これはまず、お店の存在を認知してもらわなくては、と思い、オーナーが作ったホームページにブログを書くようにいたしました。知り合いの作家の方を呼んでサイン本を作ってもらい、ブログに誰々さんのサイン本あります、と告知を載せてみたのです。

 すると効果覿面(てきめん)。いつもの倍のお客さんがいらっしゃるようになりました。それなら思い切ってサイン会をしてみようか、というので親しい作家さんにお願いし、ホームページにその旨告知を出すと、大勢のファンの方が来店してくださいました。といった具合で、店の売り上げも徐々に上向いてきたのですが……。好事魔多し。ぶじ出産を終え、しばらくして復帰してきたオーナーに二人目のお子さんが宿り、二〇〇六年の秋には、今度はぼくが不注意で自宅の塀から落ち、翌年初めにかけて三度も入院手術を受ける仕儀になり……といった具合で、二〇〇七年二月に迎えるマンション契約の更新時に、オーナーと相談をして店を閉めることにしたのです。

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文春文庫
錆びた滑車
若竹七海

定価:880円(税込)発売日:2018年08月03日

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  • 『赤毛のアン論』松本侑子・著

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