- 2018.11.30
- 書評
巨匠が描く身近な恐怖とリアリティ
文:千街晶之 (ミステリ評論家)
『ミスター・メルセデス 』(スティーヴン・キング 著 白石 朗 訳)
出典 : #文春文庫
ジャンル :
#エンタメ・ミステリ
そしてビル・ホッジズが登場する物語は、本書の後も続く。第二作『ファインダーズ・キーパーズ』(二〇一五年)は、「ファインダーズ・キーパーズ探偵社」をホリーとともに立ち上げたホッジズが、著名な作家の遺稿をめぐる事件に関わる物語だ。そして、最近邦訳が出たばかりの三部作完結篇『任務の終わり』(二〇一六年)は、メルセデス・キラー事件の関係者が連続自殺を遂げるという謎にホッジズとホリーとジェロームが挑み、三人で力を合わせて想像を絶する悪に立ち向かう内容である。第一作である本書の献辞がジェイムズ・M・ケインに捧げられていたのに対し、『任務の終わり』はトマス・ハリスに捧げられており、そこからも作中で描かれている悪が超越的存在へとスケールアップしていることは推測できるだろう。ともあれ、いかにもキングらしいダイナミックな筆致で綴られた、退職刑事ビル・ホッジズの最後の戦いを見届けてほしい。
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