- 2019.09.26
- 書評
全米を揺るがした衝撃の実話‼ 9月27日映画公開
文:阿部重夫 (『FACTA』ファウンダー)
『フラッシュ・ボーイズ 10億分の1秒の男たち』(マイケル・ルイス 著 渡会圭子 東江一紀 訳)
明らかに取引所と超高速取引業者はグルなのだ。東証と大証が合併した日本取引所グループ(JPX)の二〇一九年三月期決算でコロケーション利用料として営業収益に計上されたのは三十八億八千七百万円だが、前年度比一〇.九パーセント増と他の現物や先物取引が軒並み前年度比マイナスの中で大健闘している。ところが、その利用状況も契約者数も内訳も、データセンターの所在地についても「一切明かせません」(JPX広報・IR)とひた隠しなのだ。
国家機密、と言わんばかりの箝口令だが、どうも“黒目”(日本人)のフラッシュ・ボーイズはまだまだ海外勢に遅れをとっているらしい。一九八〇年代からロケット・サイエンティストたちが金融市場に流れこんで、アルゴリズム取引の基礎ができあがったアメリカとは、残念ながら理系の天才秀才の層の厚さが違うのだ。
「日本のフラッシュ・ボーイズ」とは、太平洋を渡って上陸したヴァーチュ、XTXマーケッツなど、本書にも顔を出す外来種の“猛者”たち十社が中心なのだ。ただ、上陸したとはいっても、日本にオフィスもおかずに、JPXとコロケーション契約を結び、彼ら独自のアルゴリズムを仕込んだサーバーが、データセンター近くの一角に置いてあるだけだ。オペレーターは香港、シンガポール、オーストラリアなどにいて、遠隔操縦でサーバーのプログラムをときおり微調整している程度。売買注文はすべてこの“青目”の「無人ロボット」がプログラムに従って自動的に出している。海底に身を潜めるアンコウのように市場の動きに目を光らせ、大きな獲物がみつかるやいなや、東証や大証会員の日系証券会社を通じて大量の注文を浴びせかけては、広く薄く荒稼ぎしている。なのに、取引所が「国益」を主張するなど笑止の極みである。
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