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全米を揺るがした衝撃の実話‼  9月27日映画公開

全米を揺るがした衝撃の実話‼  9月27日映画公開

文:阿部重夫 (『FACTA』ファウンダー)

『フラッシュ・ボーイズ 10億分の1秒の男たち』(マイケル・ルイス 著 渡会圭子 東江一紀 訳)

出典 : #文春文庫
ジャンル : #ノンフィクション

『フラッシュ・ボーイズ 10億分の1秒の男たち』(マイケル・ルイス 著 渡会圭子 東江一紀 訳)

 ルイスのウォール街摘発を「極論」と貶す人の正体は、たいがい超高速取引業者のお仲間である。いまや市場自体がグルの構造になっている。それを証拠づけるのが、もうひとつの暗部「ダークプール」である。

 大口注文をこなすために複数の取引所に注文を分散させると、超高速取引業者に探知されてしまうため、ゴールドマン・サックスやクレディ・スイスといった大手金融機関が私設取引所(PTS)を設けて内部で売買を成立させる仕組みをこしらえた。受け皿になる客をみつけて納得する価格で売買を成立させる、という意味では広義のマーケットメイキングだが、注文情報が外に漏れない代わりに、公正な値付けも透明性も保証されず、当事者の腹ひとつで決まるから、まさに「藪の中」、ダークプールなのだ。

 もはや立会場で場立ちが声をからす場面は昔語りになった。市場が目に見えなくなるばかりか、ニューヨークやロンドン、シカゴなどの巨大証券取引所はどんどんシェアを食われ、世界で取引所合併ブームが起きたことは記憶に新しい。実は老舗の証取が、BATSなど新興取引所の台頭とダークプール拡大で窮地に立たされていたのだ。

 野村や大和といった日本の証券会社も、私設取引所という「隠れ蓑」を設けている。「価格は公開市場とリンクするようセットされているから、ダークプールではあってもアメリカのようにダークではない」と強調するが、いかに分散させ目くらましをかけても、大口注文を探り出すアルゴリズムとのいたちごっこは続く。公開市場と私設取引所という二重底も、現実の需給を反映しない株価形成の要因となる。いわば市場が「建前」と「本音」に分裂してその機能が歪み、やがては信頼を失うことになるだろう。

文春文庫
フラッシュ・ボーイズ
10億分の1秒の男たち
マイケル・ルイス 渡会圭子 東江一紀

定価:957円(税込)発売日:2019年08月06日

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