本の話

読者と作家を結ぶリボンのようなウェブメディア

キーワードで探す 閉じる
電気も水道もない山奥で暮らす老夫婦が、テレビクルーを大いに焦らせた出来事

電気も水道もない山奥で暮らす老夫婦が、テレビクルーを大いに焦らせた出来事

文:佐々木聰

『ふたりの桃源郷』


ジャンル : #ノンフィクション

『ふたりの桃源郷』(佐々木聰 著)

 夫婦円満、秘訣はセックス

 寅夫じいちゃんとフサコばあちゃんは、とにかく仲がいい。桃源郷はあんなに広いのに、いつもくっついている。僕たち取材スタッフが何人いようが、カメラが回っていようがいまいが全くお構いなしだ。

 木陰で新聞を読みながらウトウトしているじいちゃんを見つけると、ばあちゃんはもう一つ椅子を持ってきて、ちょこんと横に座る。そして、すました顔でじいちゃんにピッタリと寄り添い、気がつけば手も握っている。それが自然で、なんとも可愛らしい仕草なのだ。老いてもなお、こんなにも女性らしくいられるものなのかと驚かされる。どちらかというと、ばあちゃんの方から寄り添っていく場面が多い気がする。それをじいちゃんは嫌がるでもなく、いつも大きな笑みをつくってやさしく包み込んでいるようだ。

草の上に足を投げ出してひと休みしていた寅夫じいちゃんをロングショットで撮影していると、どこからともなくフサコばあちゃんが歩み寄り、じいちゃんの隣にちょこんと座った。©山口放送

 映画のポスターやチラシに使った写真も、草の上に仲睦まじく座るふたりのツーショットで、テレビの映像から切り取ったモノだ。草の上に足を投げ出してひと休みをしていた寅夫じいちゃんをロングショットで撮影していると、どこからともなくフサコばあちゃんが歩み寄り、じいちゃんの横に可愛くちょこんと座るという場面だった。ばあちゃんは、じいちゃんを惚れ抜いているように感じる。

 逆にばあちゃんに対する寅夫じいちゃんの愛情は、どれ程のものなのだろう。平成13年から14年にかけての取材を始めて間もない頃、僕はインタビューで毎回必ず同じ質問をした。

 

「夫婦円満の秘訣は何ですか……?」

単行本
ふたりの桃源郷
佐々木聰

定価:1,650円(税込)発売日:2019年10月09日

プレゼント
  • 『赤毛のアン論』松本侑子・著

    ただいまこちらの本をプレゼントしております。奮ってご応募ください。

    応募期間 2024/11/20~2024/11/28
    賞品 『赤毛のアン論』松本侑子・著 5名様

    ※プレゼントの応募には、本の話メールマガジンの登録が必要です。

ページの先頭へ戻る