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電気も水道もない山奥で暮らす老夫婦が、テレビクルーを大いに焦らせた出来事

電気も水道もない山奥で暮らす老夫婦が、テレビクルーを大いに焦らせた出来事

文:佐々木聰

『ふたりの桃源郷』


ジャンル : #ノンフィクション

『ふたりの桃源郷』(佐々木聰 著)

 僕が取材を始めて2年目の平成14年。じいちゃんとばあちゃんの山暮らしの様子を全国放送することになった。番組は日本テレビ系列の朝の情報番組「ズームイン!!SUPER」。20分という長尺の枠で、桃源郷からの初めての生中継だ。山の朝の様子を3台のカメラを使って、生の映像で全国のお茶の間に届ける。

 まずは、それまでに取材したふたりの山暮らしの様子を17分程度のVTRに凝縮して放映する。VTRには、ふたりの歩んできた道、自然の中での夫婦の暮らし、そして大阪に住む家族の様子なども含めて、生きることの素晴らしさをテーマにミニドキュメンタリーにまとめた。

 VTRが無事に流れた後、じいちゃんとばあちゃんに山小屋の前から生出演してもらった時のドキドキは今も忘れられない。

 リポーター 「寅夫さん、おはようございます」

 じいちゃん 「おはようございます!」

 リポーター 「フサコさん、喧嘩はないですか?」

 ばあちゃん 「ないです。いつも私が黙っとるからね」

 リポーター 「どうして山が好きなんですか?」

 じいちゃん 「死にものぐるいで耕したからなぁ」

単行本
ふたりの桃源郷
佐々木聰

定価:1,650円(税込)発売日:2019年10月09日

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