伊藤 「リスペクト」とか「リベンジ」とか「チャレンジ」とかもそうですよね。リスペクトなんて「尊重」「尊敬」って言えばいいじゃん、って思ってたんですが、どうもちょっとニュアンスが違う。他に表現する言葉がないから、英語を使っているのかなって。
町田 そういう意味では、現実も相当演劇化しているのかも。演劇というか、頑張って演じてます感というか。内実が伴っていない感じ。でも、平安時代以降の日本語って、そうやって変わってきたわけだから、ある意味では伝統に則ったものとも言えるかもしれないですね。新しい言葉が、長く使われていくうちに内実が伴っていくことって、これまでも多々あったわけで。だから、どんなに空疎な演劇をやっているように見えても、やがては内実が生まれてくるのかもしれない。パンクロックもそうだし、日本の現代詩も小説も、最初は演劇だったのでは。自分らの歴史とか伝統にない新しい表現を目の当たりにして、「あんなのやったらカッコええんちゃうか」って真似して、やり続けて、今があるんじゃないですかね。