『はんぶんのユウジと』(壇 蜜 著)

――小説集の話に戻りますが、これは確かにフィクションですが、読んでいると壇蜜さんの素顔がほんのり浮かんできました。主人公の一人である未亡人のイオリは子どもの頃、絵の具を混ぜて人肌色が作れないなどとても不器用です。そこには、〈どんくさく勉強もできず〉〈体型や顔を嘲笑されたまま成長してきた〉(『壇蜜ダイアリー』)と『日記』で書かれている齋藤支靜加(壇蜜さんの本名)がちょこっと顔を出しています。

 壇蜜 そうですね。みんなに「風船あげる」とか「お菓子あげる」って配っている着ぐるみを見て、「あれには毒が入ってる」と思うようなタイプの子でもありましたね。

――外見は派手だけど、中身はしっかりしているリカには、洗濯が得意で、日常のこまごまとしたことをやるのが大好きな『日記』の壇蜜を感じましたね。

 壇蜜 リカのように、自分が嫌われていると分かっていても、それはそれとしてドライに受け入れるところは、タレントとしての自分もあると思います。

――好きだ好きだと言い寄ってタクミ君をあっさり捨ててしまうシーンでは、『壇蜜ダイアリー』の〈男には「寝ているところを無理に起こされて別れた人が2人いる」〉というくだりを思い出しました。

 壇蜜 自分の都合次第で踏みにじっていくというのも、もらったものは返さないっていうのも結構似ていると思います。

文學界 12月号

2019年12月号 / 11月7日発売
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