秦王政は、これまで使っていた「王」に代わって「皇帝」という新しい称号を作り、また死後あたえられる諡(おくりな)をやめて、自らを第一番目の皇帝という意味で「始皇帝」と名のった。ここに、中国史は、以後二千年以上にわたって続く皇帝による中央集権的統一帝国(これを帝政中国と歴史学では呼んでいる)が始まることになる。
帝政中国の共通する制度、それは、皇帝を頂点としたピラミッド状に築かれた官僚制、成文法(律と令)による法治、文書で行われる行政システム、中央に直属した地方行政組織などであり、それらは内容の変化を伴いつつ、二千年の長きにわたって基本構造を変えることがなかった。
かかる中央集権国家体制が、秦によって紀元前三世紀に登場したのだが、現在の甘粛省以西と自治区を除いて今とほとんど変わらない広大な領域に中央集権体制を施行したということ、考えてみれば驚異と言うほかない。
画期的と言ってよい新体制が、始皇帝一人の類(たぐい)まれな才能によって創成され可能となったのか、小説の世界ではそれは面白い題材となるだろうが、歴史学の立場、否、起こるべき常識からすれば、ことがらは、個人の力量では達成できるものではない。
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