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始皇帝は“暴君”ではなく“名君”だった!? 驚きの政治体制とは

始皇帝は“暴君”ではなく“名君”だった!? 驚きの政治体制とは

文:冨谷 至 (京都大学名誉教授)

『始皇帝 中華帝国の開祖』(安能 務 著)

出典 : #文春文庫
ジャンル : #ノンフィクション

『始皇帝 中華帝国の開祖』(安能 務 著)

 かの万里の長城は、秦一代で築かれたのではなく、戦国時代に北方に位置していた各諸侯国がすでに築いていた対匈奴の防壁をつなぎ合わせ、長城の形を作り上げたのだが、郡県制、成文法、租税制度などの諸制度もこれと同じである。統一に先立って秦をはじめとした諸侯国においてすでに行われつつあったものを統一後、全国に敷いたのであり、始皇帝による「文字の統一」「度量衡の統一」「貨幣の統一」など行政面での統一の命令は、異なる基準をもっていた諸制度を整合するために最初に取らねばならない政策だったのである。

 なるほど、既存の建造物をつないだだけの長城なら、さほど困難さを伴わないかもしれない。しかし、こと政治にかんしては、それほどたやすいものではない。「馬上で天下を取ることはできても、馬上で天下を治めることはできない」、これは漢高祖への臣下の忠告だが、旧政権を打倒したものが新しい政治体制を作りそれを進めていくことは至難である。しかし、秦はそれを成し遂げたのである。中央集権化がどうして確立し、また可能だったのか、いまそれを人体に例えて述べるとこうなろう。

文春文庫
始皇帝
中華帝国の開祖
安能務

定価:902円(税込)発売日:2019年11月07日

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