秦帝国および始皇帝の事績を知るための史料としては、司馬遷『史記』がもっとも有効と言って過言ではない。このほかには、近年陸続として出土する考古資料があり、それらは、『史記』の記述の確かさを証明していった。さきに述べた始皇帝の文書処理の記事も、出土する膨大な木簡竹簡の行政文書が全く捏造ではないことを示し、『史記』に見える始皇帝驪山陵の内容――広大な地下宮殿、庭園を造り、地下には水銀で河水を作り、魚脂をもって燈火を絶やさず明かりを保った、など――がかの兵馬俑、地下庭園遺跡の出現により、全くの出鱈目ではないことが証明され、また驪山陵の地下の水銀含有量が陵墓域に近づくにしたがって、高い数値を示したという調査結果も『史記』の記事の傍証となっている。
かく、『史記』の史料性は定評があり、始皇帝の政治、事績についての記事は史実性が高いといってもよいが、登場する人間の行動と評価、彼らの人となりに関しては、それを知る術はなかなか見つからない。ここで、『史記』が記す以下の有名な事件を紹介して、史実とはなにかを考える「資料」を提供しよう。
それは、本書『始皇帝』にも書かれている始皇帝臨終の事件である。
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